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伝説の雑誌『幻影城』の大復活(2ページ目)

1970年代後半に刊行され、多くの作家を輩出した伝説の雑誌『幻影城』――その執筆陣による豪華な"復活本"が完成しました。

執筆者:福井 健太

『幻影城の時代』ふたたび

『幻影城の時代 完全版』
同人誌版『幻影城の時代』に"最新号"を加えた豪華本。ハイレベルな短編集にして研究書・資料集でもあるファン必携の1冊だ。
同人誌版『幻影城の時代』をベースとして、当時の執筆陣による新作を載せた『幻影城 2009 JAN.No.54』を加える――『幻影城の時代 完全版』はそんな凝った構成になっている。連城三紀彦の〈花葬〉シリーズは推理作家協会賞受賞作「戻り川心中」を含む名作揃いだが、その26年ぶりの最新作「夜の自画像」の掲載は"事件"にほかならない。さらに田中芳樹の幻想譚、栗本薫の〈伊集院大介〉シリーズ、泡坂妻夫の〈亜智一郎〉シリーズと反物にまつわる掌編、田中文雄のホラー、友成純一の怪奇譚、竹本健治の『匣の中の失楽』番外編など、往年のファンには懐かしく、それ以外の人にも楽しめるテキストが追加されているのだ。

妥協を廃することで高価になった感は否めないが、マニア以外の読者にも本書から得られるものは大きいに違いない。贅沢な短編群を楽しむだけではなく、歴史を知ることでミステリーの理解を深めつつ、作家間の繋がりを通じて"これから読む本"を探すことも出来る。むしろディープな世界に通じているからこそ、ここには新たな読書への扉が開かれているのである。

【関連サイト】
探偵小説専門誌「幻影城」と日本の探偵作家たち…『幻影城』と探偵作家のデータを掲載したサイトです。
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