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"犯罪王"カームジンの襲来(2ページ目)

異色短編の名手ジェラルド・カーシュ。その代表作である〈カームジン〉シリーズが1冊にまとめられました。

執筆者:福井 健太

愛すべき"犯罪王"の語る
ユニークな手口の数々

『犯罪王カームジン』
"犯罪王"を自称する中年男カームジン。彼がカーシュに語ったユニークな手口とは? シリーズ全17編にボーナストラックを加えたファン必携の1冊。
ジェラルド・カーシュの作品中でもとりわけ有名なのが、カームジンを主人公にした一連のシリーズである。大きな口髭を蓄えた"犯罪王"カームジンが、かつて手掛けたユニークな犯罪の顛末を「私」(=カーシュ)に話して聞かせる――というのがお約束のパターンで、そこでは金融詐欺、宝石窃盗のテクニック、幽霊を使った儲け話などが軽妙に語られていく。その巧みな語り口とユーモラスな手口の数々は、それが悪事であることを読者に失念させてしまうに違いない。

2008年に刊行された『犯罪王カームジン』には(1936年から1962年にかけて書かれた)シリーズ全17編と2本の"ボーナストラック"が収められているが、ここで注目すべきは「あるいは世界一の大ぼら吹き」という副題だろう。全てが作り話かもしれないという解釈の余地を残しているのは、著者ならではのユーモアとウィットの反映にほかならない。ちなみに〈カームジン〉シリーズは『壜の中の手記』(晶文社版)に1話、『廃墟の歌声』に4話収められているが、本書との重複は性質上やむを得まい。ここは細かいことを気にせずに、愛すべき"犯罪王"との再会を喜ぶのが粋というものなのだ。

【犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き】「本棚の中の骸骨」内の『犯罪王カームジン』紹介ページです。
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