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ポール・ドハティの歴史ミステリー(2ページ目)

ポール・ドハティはイギリスの歴史ミステリー作家。謎解きとロマンに満ちた作風は日本でも熱心な読者を獲得しています。

執筆者:福井 健太

著者の代表的シリーズ
ついに邦訳スタート!

『教会の悪魔』
教会へ逃げ込んだ殺人犯が殺された事件は、教会の秘密と国家を揺るがす陰謀へと繋がっていく。〈ヒュー・コーベット〉シリーズの開幕編。
ドハティが手掛けているシリーズ中、最も作品数が多いのが〈ヒュー・コーベット〉シリーズである。1986年から2006年までに15冊が発表されており、これを著者の代表作とする声も少なくない。13世紀イギリス――エドワード1世の治世を舞台に、事務官にして密偵であるヒュー・コーベットがオカルトめいた騒動(および不可能犯罪)を解決するという本格ミステリーだが、この作風にはジョン・ディクスン・カーの影響を見ることも出来そうだ。

その第1作"Satan in St. Mary's"の邦訳が『教会の悪魔』である。金匠のローレンス・ダケットは、妹を誘惑した商人ラルフ・クレビンを刺殺し、司直の手が及ばない教会へと逃げ込んだ。やがて密室でダケットの首吊り死体が発見され、国王の命令で派遣されたヒュー・コーベットは自殺に偽装した他殺だと看破するが、これは巨大な陰謀の一端に過ぎなかった。他の邦訳作品と同じく、不可能犯罪の謎解きに期待すると肩すかしを食わされるが、当時のムードとオカルティズムに満ちた陰謀劇――いわば"歴史活劇"としてはすこぶる興味深い。状況を深く理解するには多少の知識が必要になるが、それを抜きにしても古風なスパイものとして楽しめるはず。続編の邦訳が楽しみな限りなのである。

【関連サイト】
ポール・ドハティ公式サイト…著者の紹介と著作リストが掲載されています(全文英語)。
【編集部おすすめの購入サイト】
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