三兄妹の復讐計画をシニカルに描く
著者会心の最新作
両親を殺されて詐欺師に成長した3人兄妹は、殺人犯を陥れるために証拠を捏造していく。秀逸なドラマ性と意外な結末を備えた快作。 |
戸神政行が「アリアケ」の味を盗んだ――そんな疑惑を抱いた功一たちは、政行が殺人犯である証拠を探すことにした。やがて疑惑は確信に変わり、彼らは証拠を捏造して警察を誘導しようとする。いっぽう静奈は情報を得るために行成との接触を続け、その誠実さに心を奪われてしまう。彼らの思惑は何処へ辿り着くのだろうか?
警察の視点、それを誘導する者の視点、両者の狭間に置かれた"第三者"の視点――彼らの立場と感情を並行して描き、警察小説と倒叙ミステリーを両立させるのは著者の得意技にほかならない。殺人犯が密告者を推理する『鳥人計画』、誘拐犯が"真の黒幕"に踊らされる『ゲームの名は誘拐』などにもその手法は見られるが、本書にはさらにトリッキーな趣向が盛り込まれている。三兄妹の間で繰り広げられるドラマ、捜査を攪乱される警察、14年前の意外な真相などを織り込んだテクニカルな逸品にして、今年度の国産ミステリー界を代表しうる傑作なのである。
【関連サイト】
・講談社BOOK倶楽部:流星の絆…講談社公式サイトの『流星の絆』紹介ページ。他の東野作品も紹介されています。