ベストセラー作家・海堂尊
海堂尊は1961年千葉県生まれ。外科医を経て病理医として勤務するかたわら、2005年に『チーム・バチスタの栄光』で"第4回このミステリーがすごい!大賞"を受賞。『ナイチンゲールの沈黙』『螺鈿迷宮』『ジェネラル・ルージュの凱旋』と続く医学ミステリー、ユーモラスな犯罪小説『夢見る黄金地球儀』、異色のジュヴナイル『医学のたまご』など、多彩な作品に挑んでいるエネルギッシュな実力派だ。その傑作群をまとめて御紹介しよう。映画化されたヒット作
『チーム・バチスタの栄光』
バチスタ手術中に原因不明の死亡が頻発し、万年講師の田口が内部調査を命じられた。死因は本当に医療ミスなのか? 田口&白鳥シリーズの記念すべき第1作。 |
「肥大した心臓を切り取り小さく作り直す」バチスタ手術という題材、それを軽快に捌いてみせる文体、論理マニアで"彼が通った後はぺんぺん草も生えない"と称される白鳥の変人ぶり――これらの要素が溶け合うことで、本書はユニークな"メディカル・エンタテインメント"に成り得ている。ちなみに続編『ナイチンゲールの沈黙』では眼球に寄生する癌(網膜芽腫)を患う子供の父親が殺害され、田口と白鳥は思いがけない事件に巻き込まれていく。第3作『螺鈿迷宮』は老人介護センターと寺院を兼ね備えた複合型病院にまつわる物語。そして第4作『ジェネラル・ルージュの凱旋』では――デビュー作と同じく――田口の内部調査からとんでもない真相が浮上してくる。これは第1作に勝るとも劣らない傑作なので、第2作と第3作よりも先に読むという選択肢もありそうだ。
次のページでは犯罪小説とジュヴナイルを御紹介します。