霞流一の芸人魂
小説家は自分なりの作風を持つものだが、霞流一ほど作品のキャラが立っている書き手は珍しいだろう。高度な論理性とナンセンスを両立させた霞作品は、いわゆる「バカミス」として多くの読者を獲得している。基礎を固めてから新奇なパフォーマンスに挑むような、一流の芸人を思わせるサービス精神がそこには宿っているのである。霞流一は1959年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、東宝に勤務するかたわら小説の投稿を開始し、1994年に『おなじ墓のムジナ』が第14回横溝正史ミステリ大賞に佳作入選。『フォックスの死劇』『オクトパスキラー8号』など、動物をモチーフにした作品群で人気を博し、異色の鉄道ミステリー『スティームタイガーの死走』は『このミステリーがすごい!』(2002年度版)の第4位にも選ばれている。今回はその代表的な作品を見ていくことにしよう。
奇想天外な列車ミステリー
『スティームタイガーの死走』
幻の機関車を走らせるイベントの当日、出発駅で変死体が発見され、走行中の機関車が消失した。多彩なギミックが凝らされた異色の鉄道ミステリー。 |
次のページでも霞作品を御紹介します。