稀代のトリックメーカー
柄刀一のプロフィール
伝説の奇術師が密室で殺された。執拗に密室殺人を繰り返す犯人の真意は? 多彩なトリックが詰め込まれた1700枚の超大作。 |
最新長編『密室キングダム』の魅力
1988年夏、札幌――伝説のマジシャン・壇上のメフィストこと吝一郎は、11年ぶりの復帰公演を行っていた。事件はその最中に起こった。「舞台部屋」と呼ばれる広間で一郎の死体が発見されたのだ。一郎はドラキュラのように杭を打ち込まれ、現場の扉はしっかりと施錠されていた。部屋のガラス製品は持ち去られ、家財道具はことごとく動かされている。その謎も解けないうちに第二の事件が起こり、密室状態の図書室が発火するという怪異が発生。若き名探偵・南美希風が辿り着いた犯人の正体とは……?本書には多くの密室が登場するが、そのトリックは早い段階で解明される。重要なのは物理的なトリックではなく、密室が作られた理由のほうだ。密室の謎はゴールではなく、新たな謎を生むための装置として機能している。なにしろ分量が多いだけに、伏線が回収されるクライマックスは魅力的だし、エンディングの余韻も奥の深さを感じさせる。密室ミステリーの歴史に刻まれるべき野心作なのである。
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