ホラーとミステリーを接合した
記念すべきデビュー作
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山中の村で児童失踪事件が相次いだ。事件と「背の眼」が映った心霊写真には関係があるのか? 独自のセンスが光る俊英のデビュー作。 |
いかにも「ホラーサスペンス大賞」らしく、前半は超自然ホラー、後半は謎解きモノとして書かれているのが特徴。奇抜な設定と真相を備えた第一級の娯楽小説である。
異色の青春ミステリー
『向日葵の咲かない夏』
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小学校を休んだS君の家に立ち寄った僕は、彼の首吊り死体を発見してしまう。大人を呼んで戻ると死体は消えていた。その夜、S君が現れて「僕は殺された」と訴え始める…… |
冒頭の展開こそオーソドックスな本格ミステリーっぽいが、生まれ変わりのモノが出てきた瞬間、多くのミステリー読者は唖然とさせられるだろう。異様な状況を受け入れて読んでいくと、今度は謎解きをベースにした青春小説の苦味が染み出してくる。決して愉快な物語ではなく、拒否反応を示す読者もいそうだが、この痛切さは本作の最大の魅力でもある。ビターな物語が好きな人には必読モノの野心作なのだ。
次のページでは道尾秀介の2つの大傑作に迫ります。