ミステリー「も」書く実力派の
読者の胸を打つ物語
思い込みの激しい少年ワタルは、父親のミイラに逢うために単身ロシアへと向かう。奇抜な設定を通じて少年の成長を綴った切ない物語だ |
本格ミステリーの大御所が
人と人の繋がりを丹念に描く
来日中の名探偵エラリー・クイーンとミステリ研究会員の小町奈々子が幼児連続殺害事件に挑む |
これまでに『スキップ』『ターン』『語り女たち』が直木賞候補に選ばれており、同賞の候補は今回で4度目。『ひとがた流し』はミステリーではなく、女性の生と死を見つめた小説である。アナウンサーの千夏、物書きの牧子、写真家の妻である美々――彼女たちは高校時代からの友人で、牧子と美々は離婚経験者でもある。そんなある日、牧子とその娘・さやは千夏の様子がおかしいことに気付く。千夏は重い病に罹っていたのだ。限られた日々を過ごしていく千夏を中心に、3つの家族における"人と人の繋がり"を丹念に織り上げた物語。吟味された言葉でテンポ良く綴られる文章、モノが受け渡されることで章と語り手が切り替わる構成など、巧みな計算もまた著者のテクニックを感じさせる。
多彩なジャンルで活躍している彼らの作品は、たとえ直木賞に選ばれなくとも、それぞれに優れた小説に違いない。何かの受賞作だけではなく、候補作家(の作品群)をチェックしてみるのも、充実した読書ライフを送るための有効なコツなのである。
【関連サイト】
・池井戸潤の銀行の歩き方…池井戸潤の公式サイト。作品リストと日記があります。
・北村 薫の私設ファンサイトはこちらです。