直木賞を振り返る
1月16日に第136回直木賞の選考会が行われ、4年ぶりの「受賞作なし」という結果に終わった。池井戸潤『空飛ぶタイヤ』、荻原浩『四度目の氷河期』、北村薫『ひとがた流し』、佐藤多佳子『一瞬の風になれ』、白石一文『どれくらいの愛情』、三崎亜記『失われた町』――という候補作を見るに、レベルが低かったわけではなく、選考委員との相性(運?)が悪かったと考えるのが妥当だろう。時にはこんな事もあるわけだ。ミステリーは直木賞を取りにくいジャンルで、謎解きを軸にした長編に限っていえば、第134回の東野圭吾『容疑者Xの献身』が初めての受賞だった。今回もミステリー作家の名前が並んだが、候補作は必ずしもミステリーではない。それでも彼らが実力派の小説家で、多くの傑作を書いているのはまぎれもない事実。せっかくの機会でもあるので、彼ら――池井戸潤、荻原浩、北村薫のプロフィールを簡単に紹介してみよう。
経済小説とミステリーの融合
トレーラーの脱輪事故が通りすがりの母子を死傷させた。運送会社社長は原因を究明するため、自動車会社、銀行、警察、世間との闘いを繰り広げていく |
ちなみにミステリーではないが、池井戸潤はビジネス書も数多く上梓している。『シティバンクの経営戦略』、『銀行がお金を貸す会社貸さない会社』、『マンガで読み解くやさしい融資』など、融資関係の著書が多いので――プロの小説家が書いたビジネス書として――興味のある方には一読をお勧めしておこう。
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