当月と翌月発売のものからそれぞれいくつかピックアップして、小説世界に思わずのめりこんでしまう本をご紹介します。
まずは3月に発売になった新刊から。
【3月のイチオシ】累計500万部突破の大ベストセラーダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』
歴史ミステリーをブームにした立役者。レオナルド・ダ。ヴィンチの名画に隠された暗号とは? |
冒頭、謎の襲撃者によってルーヴル美術館の館長・ソニエールが殺害されます。事件後、警察が発見したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわる館長の死体と、奇妙なダイイングメッセージでした。
現場は世界的に有名な美術品が展示されているルーヴル美術館、被害者はその館長、容疑者は事件当夜館長と面会の約束をしていたハーヴァード大学教授・ラングトン。何もかもド派手。ツカミはOKという感じです。ラングトンとソニエール館長の孫娘で暗号解読官のソフィーは、警察の追っ手をかわしながら、事件の真相に迫るのですが……。
怪しい修道士、功名心あふれる刑事、銀行の名誉を重んじる支店長、聖杯伝説マニアのイギリス貴族などなど、脇を固めるのもクセ者揃い。逃亡劇の目まぐるしい展開と、次々とあらわれる新しい暗号に引っぱられて、ページをめくる指が止まりません。
【3月の注目】シモネタが嫌いじゃなければどうぞ~クリストファー・ムーア『アルアル島の大事件』
〈全ページ抱腹絶倒〉というキャッチコピーは大げさですが、あまりのくだらなさに脱力すること請け合い。 |
主人公のタックは、化粧品会社社長のお抱えパイロット。酒場で引っかけたカワイコちゃんに「一度飛行機でしてみたかったの」とせがまれ、よせばいいのに安請け合い。機上で不埒な行為に及んだ挙句、ズボンを下ろしたまま大事故を起こしてしまい、雇い主はカンカン。途方にくれるタックの元に、南の島の伝道医師から、専属パイロットになってほしいという依頼の手紙が届きます。その島とは、ミクロネシアにあるアルアル島。思わぬ好条件に飛びつくタックですが、その裏には何やらいわくがあるようで……。
おバカだけど憎めない主人公と変人ぞろいの島民たちが可笑しくて、随所でプププと吹き出してしまいます。植民地政策の中で発生したという“カーゴ・カルト”(支配者がばらまいた物品と現地の伝統宗教が結びついた積み荷崇拝のこと)も興味深い。島に隠された秘密はなかなかヘビーですが、ラストは痛快です!
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