ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

最新刊『脳髄工場』発売中! 小林泰三さん(2ページ目)

SF、ホラー、ミステリー、ファンタジー、恋愛小説家……ジャンルの境界を超えて活躍する小林泰三さん。最新短篇集『脳髄工場』はややSF寄り。でもやっぱり1つのジャンルにはくくれない魅力を持っています。

執筆者:石井 千湖

ミステリーファンにおすすめの作品は?

密室・殺人
私立探偵・四里川陣と助手の四ツ谷礼子の“四・四コンビ”が、“密室”と“殺人”の謎にせまる。登場人物の掛け合いが笑える長編ミステリー。驚愕のラストまでたどりつけば、再読したくなること請け合い。
ガイド:SFとミステリーは両方のよさを持った作品がたくさんあって、読者も両方読む人がかなりの割合を占めるし、多くの作家がジャンルの境界をまたいで活躍していますね。小林さんもそのうちのお一人だと思います。本来はSF者である小林さんがお好きなミステリー小説を教えてください。

小林さん:どれか1つに絞るのは難しいですが、アイザック・アシモフの作品はSFとミステリの両方の要素があって、どちらのファンも満足できると思います。

ガイド:本書の収録作品で、SFやホラーはあまり読まないけどミステリー小説が好きという読者におすすめするとしたら、どれが一番よいでしょうか?

小林さん:「友達」「影の国」「タルトはいかが?」辺りがとっつきやすいのではないでしょうか?

ガイド:「タルトはいかが?」には、『密室・殺人』にも出てくる刑事が登場します。ミステリーファンとしては『密室・殺人』の探偵“四・四コンビ”シリーズの続編が気になるんですが、新作をお書きになる予定はありますか?

小林さん:いつ書くかはまだはっきりとは言えませんが、いくつか構想はあります。

ラストの一行で世界観が完全に逆転する

家に棲むもの
『家に棲むもの』はホラー色が強い短篇集。どの作品も、ラストで鮮やかに世界観が反転する。
ガイド:小林さんといえば短篇の名手というイメージがあります。小林さんのお考えになる短篇小説の魅力とは?

小林さん:やはり、短編はラストが一番重要だと思います。ラストの一行で世界観が完全に逆転する短編が理想ですが、なかなか難しいものです。

ガイド:ラストの一行で世界が逆転する……なるほど。本書でいうと、表題作と「友達」、「アルデバランから来た男」のラストに私は驚きました。最後に、今後の出版(掲載)予定を教えていただけますか?

小林さん:年内に短編集が1冊、もしくは2冊出る予定です。雑誌掲載は、<ミステリーズ!>に隔号で、ミステリーの連作短編を連載しています。また、新作ではありませんが、今年の7月に角川ホラーシネマで「家に棲むもの」と「食性」(共に『家に棲むもの』収録)がオムニバス映画「ラブサイコ」の中のエピソードとして映像化されます。

境界を描く面白さ

人獣細工
『人獣細工』の表題作はヒトに適合するようにつくられた動物の臓器を移植された少女の物語。同時収録の「本」も傑作!
デビュー作の「玩具修理者」では無生物と生物の違い。「人獣細工」ではヒトはどこまでヒトなのか。そして「脳髄工場」では、ヒトの脳に機械をつけた場合、アイデンティティはどうなるのか。

小林さんの作品を読むと、さまざまな物事の境界に興味がわきます。SF、ミステリー、ホラー、恋愛小説……。小林さんはこれからもジャンルの境界を超えた面白い作品を生み出してくれるでしょう。

<関連リンク>
小林泰三の不確定領域…小林さんの公式サイト。「たぶん駄文」と題したぜんぜん駄文じゃないコラム、ファンが小林さんの作品世界を絵で表現した「ギャラリー」、雑誌・新聞に発表した小説以外の文章を集めた「閲覧室」など、シンプルながら見ごたえ抜群。

角川ホラーシネマ オフィシャルサイト…「家に棲むもの」「食性」の映像化情報はこちらをどうぞ。
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