「このミステリーがすごい!」と「本格ミステリ・ベスト10」で2位になった石持浅海の『扉は閉ざされたまま』(2005年初版)と、「この文庫がすごい!」で『99%の誘拐』が1位になり再び評価が高まっている岡嶋二人の『そして扉が閉ざされた』(1987年初版)。タイトル、似てますよねえ。もちろん、石持浅海は岡嶋二人の作品をふまえてタイトルをつけているのでしょうが、こうやって並べるとまるで続編のようではありませんか。
2冊ともに、クローズドサークルもの(外部との接触が不可能な状況で事件が起きる)の、エポックメイキングな作品。ミステリーファンなら、きっと読みくらべてみたくなるはず。まずは2冊のあらすじから紹介します。
容疑者4人がシェルターの中で推理合戦岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』
富豪のひとり娘が不慮の死を遂げた3カ月後、現場に居合わせた男女4人が、遺族によって地下シェルターに閉じ込められる。事故死だったはずなのになぜ? |
閉じ込められたのは咲子の恋人だった雄一と、友人の鮎美と千鶴、鮎美のボーイフレンドの正志。彼らは3カ月前、咲子に招かれてシェルターのある別荘に泊まっていたのでした。最後の夜、あるトラブルのせいで咲子は車に乗って別荘を飛び出し、運転を誤って崖から落ちたと考えられていました。遺族のメッセージにあるとおり、咲子が殺されたのだとしたら、犯人を確定させればほかの人間は助けてもらえるかもしれない。必死で脱出を試みながら、4人は3カ月前の事故を再度検証します。
同窓会の合間に進行する犯人と探偵の頭脳戦石持浅海『扉は閉ざされたまま』
成城の高級ペンションで開かれた大学の同窓会。伏見亮輔は久しぶりに再会した後輩を殺害し、部屋を密室にした。なぜわざわざ同窓会の会場で殺人を? |
プロローグで後輩の新山を殺すのは、語り手の伏見。そう、本書は犯人の視点で描かれている倒叙ミステリーなのです。伏見は巧みな誘導でみんなの前で新山に眠くなる薬を飲ませ、夕食前、一旦自由行動になったときに事故に見せかけて殺害します。そして誰も入れないようにトリックを使って新山の部屋を密室にする。何時間経っても出てこない新山。最初は眠っていると思ったものの、何かがおかしい。心配する参加者たちをうまくごまかそうとする伏見ですが、最年少の優佳だけが疑問を抱くのでした。同窓会の最中に、伏見VS優佳の頭脳戦がはじまります。
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