ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

書籍とCDのコラボレーション(2ページ目)

付属CDで「音」を楽しめるミステリ関連書が相次いで刊行されました。今回はその2冊を御案内します。

執筆者:福井 健太

人気作家たちの創作落語

『ハナシをノベル!! 花見の巻』
8人の人気作家による書き下ろし落語アンソロジー。付属CDには月亭八天の落語2本を収録。目と耳で楽しめるユニークな1冊だ。
大阪中之島の中央公会堂では、2006年5月から2か月に1度のペースで「落語再生公開堂・ハナシをノベル!!」というイベントが催されている。小説家が新作落語を持ち寄り、それを月亭八天が高座に掛ける――というもので、現時点での参加作家は田中啓文、北野勇作、田中哲弥、我孫子武丸、浅暮三文、牧野修、飯野文彦、森奈津子など。『ハナシをノベル!! 花見の巻』は彼らの落語9編(田中啓文のみ2編)を収めたアンソロジーである。

小説家が"読むための落語"ではなく"演じるための落語"として書き、実際に高座に掛けられた噺――これは落語史上でも珍しいはずだ。タイトルをざっと並べてみると、田中啓文は古典を踏まえた「真説・七度狐」と「時たまご」、落語研究会出身の北野勇作は「寄席の怪談」、コント作家でもある田中哲弥は「病の果て」、我孫子武丸は本格ミステリー「貧乏花見殺人事件」、浅暮三文はSF「動物記」、牧野修はメタホラー「百物語」、飯野文彦は情念を描く「戯作者の恋」、森奈津子は同性愛ネタの「正直課長」。落語の形を取ってはいても、書き手の個性が作品に反映されているのは明らかだろう。そこにはファンにはお馴染みの"芸風"が宿っているのだ。

付属CDには月亭八天の演じる「真説・七度狐」と「寄席の怪談」(トータル約66分)が収められており、これだけでも1時間は確実に楽しめる。紹介が最後になったが、演者の月亭八天は1960年大阪生まれ。大学を卒業した1986年に月亭八方に入門し、1996年に第1回新進落語家競演会新人賞、第33回なにわ芸術祭最優秀新人賞、大阪府知事賞、大阪市長賞などを受賞。1997年には大阪府芸術劇場奨励新人に選ばれた気鋭の落語家だ。「ハナシをノベル!!」は現在も継続中だが、本書の「花見の巻」という副題から察するに、続編が上梓される可能性は高いはず。今後の展開にも要注目なのである。

【関連サイト】
HATTEN WORLD…月亭八天オフィシャルサイト。今後のスケジュールや日記などがあります。
【編集部おすすめの購入サイト】
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