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万城目学『プリンセス・トヨトミ』の新境地(2ページ目)

大学生がオニを操って戦うデビュー作『鴨川ホルモー』で注目を集め、しゃべる鹿が登場する『鹿男あをによし』がドラマ化されて大ヒット。万城目学の最新作『プリンセス・トヨトミ』をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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現実に立脚した奇想、人情味あふれる物語

プリンセス・トヨトミ
<DATA>タイトル:『プリンセス・トヨトミ』出版社:文藝春秋著者:万城目学価格:1,650円(税込)
鬼調査官がアイスクリーム中毒だったり、エリート美女が意外な素顔を持っていたり、キャラクターがユニークであるところは著者らしい。昔からその土地に伝わる何かが、ちょっと変わった形で現代に受け継がれている物語であるところも。

しかし本書には、ほとんどの人には見えない鬼やしゃべる鹿のような、幻想的な生き物は登場しない。豊臣家の繁栄と滅亡をめぐる史実、庶民が主役の文化、近代建築が多く残る街並みを背景に、会計検査院という実在する組織の仕事や、商店街の人々の暮らしをリアルに描きながら、見たことのない世界をつくりあげている。しかも、危機に陥った大阪を救うのは親子の絆。

あくまでも地に足がついていて、人情が奇跡を起こす。それが万城目学が考える大阪らしさなのだろう。中学生から老人まで、さまざまな世代の想いも描かれていて、一気に読者層を広げそうな長編だ。

※サムネイルの大阪城の画像Photo by (c)Copro


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