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『銭ゲバ』の衝撃(2ページ目)

銭のためならなんでもするズラ――。貧しさゆえにつらい幼少期を過ごし、罪を重ねながら成り上がっていく主人公の壮絶な生涯を描く『銭ゲバ』。ドラマ化され、再度注目されている名作漫画をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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『銭ゲバ』のここがすごい!

銭ゲバ 下 (3) (幻冬舎文庫 し 20-5)
<DATA>タイトル:『銭ゲバ 下巻』出版社:幻冬舎著者:ジョージ秋山価格:720円(税込)
(1)風太郎の顔
 一度見たら忘れられない、風太郎の顔。顔の半分は憎々しげに眉も眼もつりあがり、牙のような歯がのぞく。もう半分は眉も眼もたれ下がり気味で、悲しげな表情。特殊メイクでも再現しづらかったのか、ドラマでは傷を負った顔に変更されている。

(2)“悪”の描き方
 動物虐待から公害まで。風太郎が為す“悪”は幅広く、相手構わず容赦ない。読者が安易に同情したり、共感したりできないように描かれているのだ。特に「いき地獄」の章は、ここまでやるかと衝撃を受ける。しかもモンスターではなく、人間の行為として“悪”を徹底的に描いている。

(3)終章
 風太郎は邪魔者をどんどん消していき、後半には政治の世界にまで進出する。だいたいの物語では、“悪”が栄え続けることはない。風太郎も最後は失脚するのか? 「終章」はその一から五まであるが、一コマ一コマの絵の迫力に圧倒される。例えば「その三」の回想シーンで、風太郎の母が五円のお金がない家もあるのです!というときの表情。「その四」の原稿用紙の上で繰り広げられる、架空の家庭生活。そして「その五」のラストシーン。読後はしばし茫然としてしまう。

ドラマを見ていてもいなくても、原作は読んでみてほしい。お金とは何なのか。考えずにはいられない作品だ。

【関連サイト】
George Akiyama Official Web Site…『銭ゲバ』の作者、ジョージ秋山の公式サイト。

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