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第139回芥川賞候補作その1(2ページ目)

第139回芥川賞の候補作、楊逸「時が滲む朝」、 羽田圭介「走ル」、磯崎憲一郎「眼と太陽」 、木村紅美「月食の日」をご紹介!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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太陽VS月もあります!磯崎憲一郎「眼と太陽」と木村紅美「月食の日」

文藝 2008年 05月号 [雑誌]
<DATA>タイトル:『文藝夏号』(「眼と太陽」を掲載)出版社:河出書房新社価格:1,000円(税込)
次に紹介するのは、磯崎憲一郎「眼と太陽」だ。著者は「文藝夏号」のアンケートで〈最初の一行が次の文章を生み、小説の進む方向を決める〉といっているが、「眼と太陽」はこんな一文で始まる。

日本に帰るまえに、どうしてもアメリカの女と寝ておかなければならない。

語り手の「私」は、アメリカ・ミシガン州に住む日本企業の駐在員。念願叶ってデトロイトのクラブでトーリという女性に出会い、付き合うようになる。カギカッコや改行が少ない密度の高い文章で、「私」が日本に帰国するまでの日々を描いていく。

トーリと寝たとき、彼女の腋毛が黒いことに気づいたのがきっかけで結婚を決意する場面、同僚の遠藤さんが恋人との思い出話を延々とする場面がユニーク。

太陽の次は月ということで、木村紅美の「月食の日」を。

この作品の主人公は有山隆という全盲の青年。マッサージ師をしながら、アパートでひとり暮らしをしている。隆はある日、電車の中で偶然、高校時代の知人・津田幸正と再会。夕食に招待される。その日は2000年7月16日。皆既月食の日だった。

津田の妻・詩織が隆に月食とはどんなものか説明するシーンが印象に残る。目の見えない人がどんな風に世界をとらえているか、言葉で表現しようとした意欲作。

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