太陽VS月もあります!磯崎憲一郎「眼と太陽」と木村紅美「月食の日」
<DATA>タイトル:『文藝夏号』(「眼と太陽」を掲載)出版社:河出書房新社価格:1,000円(税込) |
日本に帰るまえに、どうしてもアメリカの女と寝ておかなければならない。
語り手の「私」は、アメリカ・ミシガン州に住む日本企業の駐在員。念願叶ってデトロイトのクラブでトーリという女性に出会い、付き合うようになる。カギカッコや改行が少ない密度の高い文章で、「私」が日本に帰国するまでの日々を描いていく。
トーリと寝たとき、彼女の腋毛が黒いことに気づいたのがきっかけで結婚を決意する場面、同僚の遠藤さんが恋人との思い出話を延々とする場面がユニーク。
太陽の次は月ということで、木村紅美の「月食の日」を。
この作品の主人公は有山隆という全盲の青年。マッサージ師をしながら、アパートでひとり暮らしをしている。隆はある日、電車の中で偶然、高校時代の知人・津田幸正と再会。夕食に招待される。その日は2000年7月16日。皆既月食の日だった。
津田の妻・詩織が隆に月食とはどんなものか説明するシーンが印象に残る。目の見えない人がどんな風に世界をとらえているか、言葉で表現しようとした意欲作。
第139回芥川賞・直木賞特集INDEXに戻る
【ガイドの日記】
・「石井千湖日録」…最近気になる新刊、積読、読了本など紹介しています。