朝倉かすみ『田村はまだか』
<DATA>タイトル:『田村はまだか』出版社:光文社著者:朝倉かすみ価格:1,575円(税込) |
舞台はススキノの片隅にあるスナック「チャオ」。クラス会の3次会で、5人の男女が流れてきた。みんな小学6年生のときのクラスメイトで、40歳になる。彼らは大雪で到着が遅れている田村を待っている。12歳にして孤高のヒーローだった田村のエピソードと、5人の男女、そして「チャオ」のマスター・花輪の人生の断片が視点を変えながら描かれていく。
第一話の「田村はまだか」で小学生時代に起こった出来事を知ると、田村を好きにならずにはいられない。特に鮮烈なのが、何事にも無関心で反抗的なクラスの問題児・中村理香とのエピソード。班でやらなければいけない課題にまったく関わろうとしない中村理香を、5人のうちの1人が責める。すると中村理香は、〈いつか、絶対、みんな死ぬんだ〉と泣く。本人にすら理解しがたい絶望にとらわれている少女。彼女に対する田村の言動が、大人ぶっていないのに、ものすごくかっこいいのだ。
40代にもなれば、昔を振り返って自分の今を考えてしまうもの。5人がなぜ田村に会いたがっているのか。読み進めていくうちに納得が深まる。第五話で田村が危機に直面している事実が判明し、ハラハラするのだが、ラストは破顔一笑。アラフォーはもちろんのこと、世代性別問わずオススメできる1冊だ。
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