「かわいい女子が好き」な女子たち柴崎友香『主題歌』
<DATA>タイトル:『主題歌』出版社:講談社著者:柴崎友香価格:1,365円(税込) |
主人公でキャラクターグッズを作る会社のデザイン課に勤める28歳の実加は、同じ部署のいつ子、営業部の小田ちゃんと仲がいい。特に小田ちゃんとは、“かわいい女の子”の趣味が合う。彼女たちが好むのは雑誌「PLAYBOY」に載っているような、ストレートに色っぽく、でもどこか清潔感のある女の子。まさにインナー男子を目覚めさせているような感じ。
といっても恋愛対象として好きなわけではない。実加には同棲している彼氏がいるし、小田ちゃんも結婚する予定。彼女たちにとってのかわいい女の子は、きっとスイーツのようなものなのだ。男がいてもかわいい女の子は別腹。そんな女子たちの日常がシンプルな言葉でヴィヴィッドに描かれる。
彼女たちにとって周りの女の子は“かわいい”か“かわいいを愛する”人たちなので、陰湿な争いは生まれない。美しい世界だ。ただ、登場人物の何気ないセリフに、その美しい世界はいつか失われると知っているのではないかと思わされる。
なかなか言葉で表現するのが難しい女性の感情の細かな動きを丁寧に追った小説だ。
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