現代アメリカ文学といえば柴田元幸ステーヴン・ミルハウザー『ナイフ投げ師』
<DATA>タイトル:『ナイフ投げ師』出版社:白水社著者:スティーヴン・ミルハウザー訳:柴田元幸価格:2,100円(税込) |
最新刊はスティーヴン・ミルハウザーの『ナイフ投げ師』。
ミルハウザーを好きになることは、吸血鬼に噛まれることに似ていて、いったんその魔法に感染してしまったら、健康を取り戻すことは不可能に近い。
と、訳者あとがきに書いてあるが、まさにマジカルな短編集だ。アシスタントに向かって、身体が傷つくか傷つかないか、ギリギリのところにナイフを投げる――そんなシンプルな芸を売り物にするナイフ投げ師ヘンシュ。彼の公演を見に行った「私たち」は異様な出来事を体験する。ヘンシュが最後に優雅なお辞儀をするシーンに戦慄と恍惚をおぼえる表題作を含めた12編を収録。
〈高い木々の下で、月光はしんしんと降りつづけた〉といった情景描写が美しく、自動人形劇場や気球、百貨店や遊園地など、“人が造った夢のアイテムや空間”にわくわくさせられる。
スティーヴン・ミルハウザーのデビュー作『エドウィン・マルハウス』の訳者であり、『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞を受賞した翻訳家は? 答えは次ページに。