書籍・雑誌/話題の本関連情報

川上未映子『乳と卵』が出た!(2ページ目)

138回芥川賞を「乳と卵」で受賞した文筆歌手・川上未映子。話題の受賞作を収めた単行本『乳と卵』がついに発売! 注目を集める作家の現時点での全著作を紹介する。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

あふれるユーモア『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります
<DATA>タイトル:『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』出版社:ヒヨコ舎著者:川上未映子価格:1,890円(税込)
『乳と卵』と併読をオススメしたいのが、川上未映子の素顔の魅力が垣間見えるエッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』。彼女が初めて出版した著書でもある。内容はウェブ上の日記をまとめたもの。これがメチャクチャ面白くて読みごたえがあるのだ。

ガイドがお気に入りのエピソードは「キャロルとナンシー」。昔、シルバニアファミリーという動物キャラクターで遊ぶドールハウスが流行った(今も人気らしい)。ミニチュアだけれども精巧な家具は高く、川上さんとお姉さんはお小遣いを貯めてやっと買いに行くことにしたのだが――という話。川上姉妹が可愛くて、オチに大笑い。他にも牡蠣(かき)カレーを食べたら犬の匂いがしたとか、サボテンにサボコという名前をつけて慈しんだりとか。内容の楽しさもさることながら、文章の芸ももちろん堪能させてくれる。

哲学的な問いかけ『わたくし率イン歯ー、または世界』

わたくし率イン歯ー、または世界
<DATA>タイトル:『わたくし率イン歯ー、または世界』出版社:講談社著者:川上未映子価格:1,365円(税込)
わたしとは何か? わたしが存在する証はどこにあるのか? 古今東西の哲学者はそんな問いかけをしてきた。川上未映子も作中でそんな根源的な疑問をつきつめていく。人間が時代を超えて思考してきた大きなテーマが含まれているのだ。

『わたくし率イン歯ー、または世界』は、“歯”という身近なものを切り口に、“わたし”から性別や年齢などさまざまな属性や情報を除いた後に残る〈ドーナツの穴っぽいものがこう、ぐんと詰まってるような〉もの――大ざっぱにいえば“わたし”の本質――に迫った小説。大阪弁によるテンポの良い語り口で一気に読ませる。

鋭敏な言語感覚『先端で、さすわさされるわそらええわ』

先端で、さすわさされるわそらええわ
<DATA>タイトル:『先端で、さすわさされるわそらええわ』出版社:青土社著者:川上未映子価格:1,365円(税込)
「乳と卵」の緑子が巻子に対して爆発するシーンで、夏子は〈ああ、巻子も緑子もいま現在、言葉が足りん〉と思う。頭の中でいろんなことがぐるぐるしていて、誰かに伝えないと苦しいのに言葉にできない。そう感じたことがないだろうか?川上未映子の作品は、いっぱいになった想いを突いてあふれださせる、“先端”のような言葉で書かれている。

デビュー作を収録した『先端で、さすわさされるわそらええわ』は、言葉にならないものを言葉にしようとする川上未映子の鋭敏な言語感覚を味わえる1冊だ。詩のような小説のような文章は、物語性があまりないので最初は読みづらく感じるかもしれない。が、好きな表現が見つかればハマること請け合いだ。

【関連サイト】
「川上未映子の純粋悲性批判」…川上未映子の公式ブログ。小説も面白いが日記も面白い。芥川賞受賞の感想なども書かれています。

【他にもこんな本はいかが?】
「最新ガイドおすすめ書籍」…ガイドが最近読んだ本の感想を紹介しています。

【編集部おすすめの購入サイト】
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