138回芥川賞を「乳と卵」で受賞した文筆歌手・川上未映子。話題の受賞作を収めた単行本『乳と卵』がついに発売! 注目を集める作家の現時点での全著作を紹介する。

川上未映子ってどんな人?

頭の中と世界の結婚
芥川賞受賞でCDも話題に。<DATA>タイトル:『頭の中と世界の結婚』メーカー:ビクターエンタテインメントアーティスト:未映子価格:1,890円(税込)
かわかみ・みえこ 1976年、大阪府生まれ。“未映子”名義で音楽活動を行う。アルバムに「夢みる機械」「頭の中と世界の結婚」など。2005年ごろから雑誌に詩やエッセイを発表し始める。2007年、初めて書いた中編小説「わたくし率 イン 歯ー、または世界」で第137回芥川賞候補になり、惜しくも受賞を逃すが、同年第1回坪内逍遥大賞奨励賞を受賞。2008年1月「乳と卵」で第138回芥川賞を受賞。

初めての中編小説を発表して1年も満たずにビッグタイトルを受賞。ありきたりの表現だが“彗星のようにあらわれた”大型新人というのは、川上さんのような人のことをいうのだろう。普段は純文学作家を取材しないような媒体もこぞって取り上げている。

第138回芥川賞受賞作を含む単行本『乳と卵』

乳と卵
<DATA>タイトル:『乳と卵』出版社:文藝春秋著者:川上未映子価格:1,200円(税込)
○表題作「乳と卵」東京の三ノ輪に住んでいる語り手の夏子のもとに、大阪から姉の巻子が娘の緑子をつれてやってくる。緑子は少し前から母親と口をきかなくなっており、コミュニケーションの手段は小さなノートを使った筆談。巻子の上京の目的は豊胸手術で、小学校6年生の緑子は初潮について気になる諸々をノートに書きつけている。まさに乳と卵(子)の話。

思春期の少女(緑子)、30代前半の独身女性(夏子)、もうすぐ40歳の経産婦(巻子)。それぞれの年代で女性が自分の体に抱く違和感を、音読すると気持ちいい、リズミカルな文章で描く。巻子が自分の乳首を喩える言葉が絶妙! 読んだときに感じる驚きと共感のバランスが良く、最初に読む1冊としてもオススメだ。

○同時収録「あなたたちの恋愛は瀕死」趣味もなく日曜日は決まって新宿へ行き、朝から晩まで化粧品や洋服を見て過ごす女が、まったく知らない男と出会ってそのままいい感じで性交することを夢想しながら街を歩く。彼女は思い切ってテッシュ配りの男に話しかけるが——。

〈醜い恐竜の爪のような顔〉など、女性の体に対する批評は相変わらず鋭い。化粧品売り場で見た光の描写と呼応するような最後の一文が、悲しいような淋しいような、でもしみじみと可笑しいような、なんとも言いがたい余韻を残す。

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