書籍・雑誌/話題の本関連情報

旅に持って行きたい文庫ベスト5(4ページ目)

年末年始、旅の計画を立てている方も多いのでは? 2007年に発売された文庫の中から、旅のおともにしたい本を5冊セレクト。もちろん、家でゆっくり読むのもオススメ!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

怖いけれど読むのがやめられない傑作が復刊

画像(C)東京創元社
おとぎ話の主人公のような無垢な少女の視点で人間の悪意を描く傑作恐怖小説が復刊!<DATA>タイトル:『ずっとお城で暮らしてる』出版社:東京創元社著者:シャーリイ・ジャクスン価格:693円(税込)
『ずっとお城で暮らしてる』の主人公は、メアリ・キャサリン・ブラックウッド、通称メリキャット。父も母も弟も、6年前に死んでしまった。毒入り砂糖をかけたブラックベリーを食べて。だれが毒を入れたのか?

メリキャットの大好きな姉、妖精のお姫さまのようにきれいなコンスタンスが疑われるが、真相は不明のまま。姉妹は村人の恐怖と悪意に囲まれながら、事件の起こった屋敷で暮らしている。メリキャットが心の中で何度もつぶやくみんな死んじゃえばいいのにというフレーズが印象的。不吉な言葉なのに、そのリフレインには、妙に明るい響きがあるのだ。

外界から隔絶された屋敷。豪華な調度。まるで何もなかったかのように、畑で獲れる四季折々の果物や野菜で、ジャムや瓶詰めを作るコンスタンス。月の上で暮らす空想にふけり、宝物を庭に埋めるメリキャット。徹底的に現実感は欠けているが、本人たちにとっては平穏な毎日だ。それが従兄と名乗る青年によってかき乱されて……。

あることがきっかけで村人がヒステリー状態になる第8章も怖いが、最後のメリキャットのセリフはもっと怖い。言葉だけ抜きだせばとてもポジティブで光に満ちているのに。

解説を寄せている作家・桜庭一樹ほか、多くの読者が復刊を待ち望んでいた1冊。毒はあるが魅惑的な世界に連れて行ってくれる。

<DATA>
タイトル:『ずっとお城で暮らしてる』
出版社:東京創元社
著者:シャーリイ・ジャクスン
価格:693円(税込)

最後にノスタルジックな世界を美しい文章で描いた短編集を紹介!

  • 前のページへ
  • 1
  • 3
  • 4
  • 5
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます