異国の友人と過ごしたかけがえない日々を描く感動作
時は1899年。はるかなるトルコに渡った村田君と友人たちのかけがえのない日々を描く。登場人物がリンクする『家守綺譚』もあわせてどうぞ。<DATA>タイトル:『村田エフェンディ滞土録』出版社:角川書店著者:梨木香歩価格:500円(税込) |
『村田エフェンディ滞土録』は、国も宗教も異なる彼らが第一次世界大戦直前のトルコで過ごしたかけがえのない日々を描く。
敷石に落ちた葱まで美しく感じる情景描写、幽霊や神様など不思議な存在が日常に何食わぬ顔して現れるところがいい。そして、激動の歴史の中で広い視野を持ち、他者を思いやる人々の姿に心を動かされる。品格という言葉は、本書の登場人物のような人にこそふさわしい。
特にディミィトリスが村田君に教えた、
私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁な事は一つもない。
という言葉と、P229で鸚鵡が叫んだひとことが忘れがたい余韻を残す。静かで深い感動作だ。
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タイトル:『村田エフェンディ滞土録』
出版社:角川書店
著者:梨木香歩
価格:500円(税込)
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