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森見登美彦『有頂天家族』が可愛い(3ページ目)

2007年のガイド強力プッシュ本の1冊。キュートな狸一族と天狗、人間が入り乱れて巻き起こす大騒動! 愛と笑いと奇想に満ち満ちた、森見登美彦『有頂天家族』をオススメ。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

それは阿呆の血のしからしむるところ

有頂天家族
第二部の連載もスタート。これからも楽しみなシリーズだ。<DATA>タイトル:『有頂天家族』出版社:幻冬舎著者:森見登美彦価格:1,575円(税込)
父は生前、兄弟が何か悪さをして騒ぎを起こすたびに「それは阿呆の血のしからしむるところ」といっていた。その阿呆の血がもたらす奇想天外な出来事に魅了される。

例えば第三章「納涼船合戦」。五山送り火を狸たちは納涼船から見物する。納涼船といっても川に浮かべるのではない。空に浮かべる。下鴨家の納涼船は前年に金閣・銀閣に焼かれてしまったため、この年は赤玉先生の奥座敷を借りる。奥座敷に茶釜があって、そこに赤玉ポートワイン(!)を入れると空を飛ぶのだ。

で、夷川家の船とまたもや遭遇してしまい、大文字を眼下に見ながらの合戦が始まる。思わず脳内でアニメ化してしまうほど、イマジネーションがはじけるシーンだ。矢三郎が金閣・銀閣のワナにはまるシーン、夜の京都を次男の矢二郎が化けた偽叡山電鉄が疾走するシーンなど、なにせ狸なので、化かし合いも面白い。

本当にニコニコしながら読める楽しい本なのだが、不意打ちで涙腺をゆるませる場面もある。例えば矢二郎は父の最後のセリフを酔っ払って忘れてしまい、ずっと悩んでいた。それを終盤で思い出すのだ。父が何といったのか知ったとき、素直に「なんていい家族だろう!」と感動してしまう。愛を陳腐じゃなくストレートな形で語ることができるとは。森見登美彦の新たな魅力を発見した気がした。

10月末に「パピルス」で第二部の連載もスタート。これからの展開から目が離せないシリーズだ。

<DATA>
タイトル:『有頂天家族』
出版社:幻冬舎
著者:森見登美彦
価格:1,575円(税込)

【関連リンク】
この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ…森見登美彦のブログ。著者によれば「森見登美彦氏の近況を虚実ないまぜにお伝えする」とのこと。ただ、著作情報には嘘はないらしい。

【ガイドより】
ガイドの読書メモ随時更新中!…気になる新刊、読み逃していた既刊、掘り出し本をランダムに紹介。

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