個人的には、ノーだと思う。
答えのみならず問いそのものが孕む両義性や不確実性のようなものを、「リョウギセイ」や「フカクジツセイ」なんていう言葉から伝えわるのは比べものにはならないほどのリアリティーをもって伝えうるものが小説ではないかと思う。
■「ヘンな世界」は、「ヘンじゃない世界」以上に・・・小説の役割・リアリティーとは何かを考えさせられる作品
本作は、『となり町戦争』と同様、いわば、「ヘンな世界」を作品である。だが、「ヘンじゃない世界=今、現実に起こっている表層的な事実の集積」をきちんと描いた作品以上に、同時代性を感じる。
私たちが現実に生きている世界も、おそらく、流動的で、曖昧で、不確かなものなのだ。それゆえに、ソリッドで明確なものが求められる傾向にある。そういうものを、たとえば、メディアという拡声器を使って、大声で、強く、いっけん「わかりやすく」主張されると、その主張を基準に「現実」「時代」「正義・悪」は容易に決定してしまう。それがいい、悪いではなく、その「現実」「時代」「正義・悪」だけが、「現実」「時代」「正義・悪」なのだろうか。たとえ、そうだとしても、この流動的な世界に生きる私たちは、大声で主張される「現実」「時代」「正義・悪」に対して、何らかの疑いをもつべきではないだろうか。
著者が、このような主張を本作に込めているかはどうかわからない。だが、私は、この著者の作品を、現実というものを見る視点を提示しうる力のあるものだと感じる。本作は小説のリアリティとは、何かを考えされる作品である。
ただ、ただ、楽しくて、夢中になれて、読み終わるといい気分になる、そんな作品ももちろんいい。めちゃくちゃいい。だけど、そうじゃない作品だって、いい。やっぱり、めちゃくちゃいい。
この著者の作品を未読の方は、ぜひ一度手にとっていただきたい。
この本を買いたい!
◆新鋭、十代の書き手も続々。実は、とってもホットなこのジャンル。「読まず嫌い」は絶対ソン!情報チェックは、「恋愛・純文学を読む」で
■第17回すばる新人賞を受賞し、デビューした著者(女性だと思ってました・・・)。ほかには、こんな受賞者が
第6回『天使の卵』で受賞。直木賞も受賞し、デビュー作の続編も好調。公式ページ「YUKA Blue」では、あったかいお人柄が感じられるご本人のメッセージも。
第12回『粗忽拳銃』で受賞。ご本人のページ。「竹内真のページ」では、独特のユーモアが楽しめる身辺雑記、フォトエッセイなどが。
「小説すばる新人賞」「すばる文学賞」など、集英社主催の文学賞の情報は、「e集英社出版四賞」でチェック。
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