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祝!直木賞 『邂逅の森』(2ページ目)

山本周五郎賞を受賞した『邂逅の森』が、直木賞受賞!文壇初のダブル受賞です。同作は、東北を舞台に、若きマタギの波乱の人生を、大自然の畏怖の思いを込めて描ききった力作。ガツンと来ます!

執筆者:梅村 千恵

■大自然への畏怖を、主人公としての実感として重厚に強く伝える
 
 マタギである富治たちは、自らと家族の命を養うために、生き物の命を奪う。その業の深さを自らの身体に刻みつけ、子孫へ伝承するための“装置”として「山の神様」の戒めで自らを縛っている。だが、富治は、「神様」の存在に、時としては疑問を抱き、怒りを覚え、反発をしているのだ。
そして、生死を賭けた闘いの中で、こう実感する。
「山の神様が宿っていようがいまいが、山の中で、一対一で対峙したとき、野生の生き物のほうが人間に勝ってしかるべきななのだ。それが自然の姿であるべきなのだ」――
 
 この富治の実感の深さと強さは、「大自然の畏怖」などという単純な一言をはるかに凌駕する。

■主人公が放つ「男」の魅力にガツンとハマる

 冒頭で私は、「あまりにもマッチョ」と書いたが、小説の世界から男らしい男が消えて久しい(村上春樹のせいかな、やっぱり)。「自分って何?」と内省する前に、自らの身体と、自身を育んできた自然に答えを求める富治は、強烈に男っぽく、稀有な輝きを放っている。

 何より、初恋の人・文枝と息子の出現にオロオロする富治は、とてもチャーミングだ。
奔放な肉欲と純な恥じらいを併せ持っていて、男って、可愛いなとつくづく感じる。もちろん、著者は、女性読者にも、そして、男性読者にも媚びるつもりは、毛頭ないだろう。それだけに、この主人公と、彼を取り巻く男女たちの魅力がストレートに響いてくる。

 文芸界のトレンドにも、読者にも媚びない、骨太な作品が、直木賞を受賞したことを嬉しく思う。ガツンとくる作品を求めている人にぜひ。

この本を買いたい!


幅広い層に支持される良作を選出する直木賞。文壇の人気トレンドを押さえるなら「ベストセラーをチェック」へ。

『ウエンカムイの爪』で小説すばる新人賞を受賞してデビューした著者。心未来の直木賞作家を発掘する公募新人賞情報を入手できるページを集めてみました。狙ってみる?


熊谷氏のほか、篠田節子、村山由佳など直木賞作家もこの賞の出身者「小説すばる新人賞」

こちらは、前回の芥川賞受賞で話題になった金原ひとみを輩出。辻仁成、中上紀もこの賞出身です。「すばる文学賞」

同じく前回の芥川賞作家・綿矢りさはこの賞出身。若い世代に支持されている作家を輩出するとあって、人気の高い文藝賞の情報はこちらから「河出書房新社 文藝」

賞金、権威、知名度・・・エンタメ公募新人賞の王者といえば、やっぱりこの賞。受賞者も桐野夏生、福井敏晴と葬送たる面々も名を連ねます。江戸川乱歩賞の情報はこちらから「日本推理作家協会」
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