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水野晴郎の『シベリア超特急』におののく!

映画生誕100年、戦後50年の記念に映画評論家の水野晴郎が映画製作に乗り出したカルト映画。いつしか知らぬ者はいないサブカルチャーのトンデモ映画となった『シベ超』特集です。

執筆者:中野 豊

いやぁ~、映画って本当に……

バルカン超特急
『シベ超』の原点と言える、ヒッチコック監督の『バルカン超特急』
様々ですね。

鉄道・列車内は移動する密室空間です。サスペンスには格好の舞台設定であり、今回の特集『シベリア超特急』はスリラー映画の名匠ヒッチコック監督の『バルカン超特急』からインスピレーションを得、監督のMIKE MIZNO(水野晴郎)自身もヒッチコック作品やプライアン・デ・パルマ作品の影響・引用を公言しています。

ヒッチコック監督が列車内描写をキーとしたサスペンス映画には『疑惑の影』、『見知らぬ乗客』などの秀作があります。また、アガサ・クリスティ原作でシドニー・ルメット監督の『オリエント急行殺人事件』、細菌被害のパニック映画『カサンドラ・クロス』、などは、移動する密室である列車内の恐怖が存分に発揮されている秀作です。

『シベリア超特急』の魅力

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『シベリア超特急』=これで一気に『シベ超』マニア
さて、一部のカルトファンの口コミからサブカルチャーを代表する、みうらじゅん等の絶賛を浴びシリーズ化されました。今や映画ファンでなくとも耳にしたことのある『シベ超』(ファンは略してこう呼びます)の魅力はいったいどこにあるのでしょうか?

『シベリア超特急』はコアな映画ファンや鉄道ファンに贈る、映画生誕100年、戦後50年を記念に映画評論家・水野晴郎が映画製作に乗り出した作品です。BUT! 第一作目を観た時、どれくらいの映画ファンが本作に拍手喝采し「よくやった!水野晴郎は日本のヌーヴェルバーグだ!」と言ったのでしょうか? 私は1本で終わりだと思っていた側ですが、にわかに信じられないムーブメントが起こり始めました。

若者達に熱狂的な支持を受けた本作は、一度見れば必ずツッコミをいれたくなり、笑う事になるでしょう。いや、笑わせているのか笑われているのか、演出なのかトラブルなのかが判断し難く、随所にNGらしきシーンや、セリフの棒読み。鈍感力なのか演出なのかさえわかりません。水野晴郎は映画評論家で、名作映画を浴びて育ってきたはずなのですから……。今だに秀作なのか、「おバカ映画」なのか答えは出ませんが、それでも現在では傑作シリーズという地位を築いています。

名作映画の引用・パロディの多くの露出は、これは映画をどれだけ観ていたのかを思い知り、ファンとしてはとても楽しいのですが、オリジナルを知らなければ「意味不明」じゃんと片付けられそうなシーン、無意味に感じる長回し、どんでん返しの大サービスのやり過ぎ大放出!

ただし、本作シリーズの根幹に「反戦」意識があることは1作目から徹底されており、テーマを貫き通したことは映画作家として素敵なことです。このあたりに本作の真の魅力が隠されているのかもしれません。

映画評論家・水野晴郎は評価・批判される側にまわる境地にまで達したかったのかもしれませんね。


次ページは、『シベリア超特急』シリーズのあらずじを……。
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