花売り娘と放浪者の恋愛
『街の灯』
無声(サイレント)映画から、チャップリンの『街の灯』 |
凡作のない天才映画作家、チャップリン作品には「様々な愛」が詰まっています。中でも本作と『ライムライト』は、一人の女性を想う恋愛映画の傑作です。
放浪者チャーリーは、ふとしたことから盲目の花売り娘(ヴァージニア・チェリル)と知り合います。花を買うお金もないチャーリーは、ボクシングの試合に出たり、掃除の仕事をしたりと「彼女の眼の手術」のために頑張りますが、思うようには稼げません。そんなある日、大金持ちから大金を貰うことになり、そのお金を彼女の手術代にあてます。大酒飲みの大金持ちはチャーリーにお金をあげたことなどすっかり忘れてチャーリーは泥棒扱い……。そして投獄されてしまうのです。
刑期を終えて街に出たチャーリー。眼が見えるようになった花売り娘は恵まれない放浪者チャーリーに金を恵んでやろうと彼の手に小銭を掴ませます。チャーリーの手に触れた瞬間、彼女は気づきました。
最良のラヴストーリーの最良の結末に号泣です。
・1931年/アメリカ映画
・上映時間:86min
・監督:チャールズ・チャップリン
富豪令嬢エリーと新聞記者ピーターの恋愛
『或る夜の出来事』
アカデミー作品賞など主要5部門を制覇した『或る夜の出来事』 |
セレブな家出娘と新聞記者の珍道中記。互いに惹かれあい、意地の張り合いをソフィスティケートに描きます。
ヒッチハイクの車を止める「裏技」としてスカ-トをたくし上げ、脚線美を見せるエリー(クローデット・コルベール)。以来、この仕草は映画やドラマ、或いは実際に数限りなく使われることになりました。
モ-テルで二人が泊まる時、ツインベッドの間に毛布を掛けて「ジェリコの壁」とする場面は、相手の陣地に侵入せず男女の仲にならぬよう配慮する微笑ましいシーンです。ラストでは、結婚式直前に父親の説得でエリ-が逃げ出す名シーンなどがキラ星のように散りばめられています。
新聞記者とセレブリティーの恋物語は、続いて紹介する『ローマの休日』の原型といってもよいでしょう。
・1934年/アメリカ映画
・上映時間:105min
・監督:フランク・キャプラ
王女アンと新聞記者ジョーの恋愛
『ローマの休日』
甘くて切ない恋の御伽噺『ローマの休日』 |
ヨーロッパを旅行中のある国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)がローマを訪れたとき、日々続く公務に疲れ、侍従が目を離した隙にひとりで街へ出て広場のベンチでぐったりと寝こんでしまいました。そこへ通りかかったアメリカの新聞記者ジョー(グレゴリー・ペック)は、彼女を王女とは知らず、助けおこして自分のアパートへ連れ帰ります……。そこから王女と一介の新聞記者とのロマンスがはじまります。
終盤、王女の記者会見席上で「今回の訪問は永遠に忘れえぬ思い出となるでしょう」というお言葉を残します。観客は、その言葉の意味をジョーと共に理解し涙することでしょう。
・1953年/アメリカ映画
・上映時間:118min
・監督:ウィリアム・ワイラー
次ページは、セレクト10の最後の3本『めぐり逢い』、『ある愛の詩』、そして『タイタニック』です。