男を狂わす魔性の女たち
2002年/アメリカ=フランス映画/上映時間:115min/音楽:坂本龍一/ブライアン・デ・パルマ監督作品『ファム・ファタール』 |
「魔性の女」と聞いてどんなイメージを抱くでしょうか。自己中心的な猫型の女性? 微笑むだけで男性が近づいてきてしまう天真爛漫な女性? 計算高い女性? それらのキーワードの冠に「美貌の」が付くように思います。
ファムファタールの代表格といえば、新約聖書に登場する「サロメ」でしょう。母ヘロディアの命によって古代パレスチナの領主ヘロデ・アンティパスから舞踏の報償として洗礼者ヨハネの斬首を求めた女性です。オスカー・ワイルドの戯曲にもなり、鬼才ケン・ラッセル版、フラメンコ・バレエで官能的に魅せるスペインの巨匠カルロス・サウラ版など何度も映画化されいます。
「ファムファタール」という単語をそのまま題名にしたブライアン・デ・パルマ監督作品があります。人生には常に分かれ道があり、選択した道により人のその後が大きく変わるという「夢落ち」のような不思議な物語です。
私は、本作宣伝用アイコンになった、ランジェリーとはどうしても思えない「蛇のビスチェ」が気になって仕方がありませんでしたが……。
日本文学から「ファムファタール」の代表として、谷崎潤一郎原作『痴人の愛』の主人公ナオミはどうでしょう? 男自らが見い出し育て上げた美少女ナオミに逆にのめり込み破滅する物語(スタンリー・キューブリック監督作『ロリータ』も同系列のお話)。妖艶に変身してゆく女性にハマリ込み自滅してしまう男の悲劇。身に覚えのある男性も少なくないのでは?
現代のか弱き?男性のみなさん。名作映画のファムファタールの手口を掴んで、身の危険を回避しましょう。
そこで次ページは、ファムファタール映画からビリー・ワイルダー監督作の最高の1本『サンセット大通リ』、サスペンスの名作『白いドレスの女』を紹介しますので、騙されやすい優しい男性諸氏はリスクヘッジに活用してください。