戦場での都合の悪い真相を、今あぶりだす『ゆきゆきて、神軍』

『ゆきゆきて、神軍』
人を追い詰める恐怖、追い詰められる恐怖!『ゆきゆきて、神軍』
続きまして、戦争を語るドキュメンタリーの秀作3本を紹介します。その1本目は戦後最大の衝撃的な記録映画は邦画から『ゆきゆきて、神軍』です。

『極私的エロス』『全身小説家』のドキュメンタリー映画の巨匠、原一男監督の最高傑作。アナーキスト奥崎謙三が、ニューギニア戦線で起きたと言われる日本兵同士の食人疑惑を追求していきます。今では、いいおじいさんとなった人々に、忘れ去りたい当時の真相を聞き出す過程の過激なまでの執念に恐怖と戦慄をおぼえます。

・1987年/日本映画
・上映時間:122min
・監督:原一男
・出演:奥崎謙三

ヒトラーの生涯の記録『我が闘争』

『我が闘争』
人類史上の極悪人ヒトラーの生涯の記録『我が闘争』
ヒトラーを扱ったドキュメンタリー映画には『野獣たちのバラード』なるソ連映画の秀作もありますが、私はこちら、スウェーデン映画の『我が闘争』を取り上げます。

ヒトラーの少年時代から第一次世界大戦、第二次世界大戦敗戦と破滅までをニュース映像、スチール写真、ゲシュタポ教育用映画などで綴っていきます。正気の沙汰ではないヒトラーが行った悪行の数々。次に紹介します『夜と霧』と一緒にご覧ください。

・1960年/スウェーデン映画
・上映時間:117min
・監督:エルウィン・ライザー

嗚咽のとまらない歴史認識の記録『夜と霧』

『夜と霧』
怒りをこえて、ただ見詰めるのみ……。『夜と霧』
1933年2月、ヒトラーは国民と国家防衛のためという大義名分から強制収容所を法制化しました。すべてのユダヤ人は容疑者とされ、捕らえられたユダヤ人は収容所に送られました。

本作は戦後10年目にして作られた強制収容所「アウシュビィツ」の記録です。山のように積み上げられた死体をブルドーザーで処理。毛布や服などを作るために集められた髪の毛。金歯や眼鏡のフレームといった貴金属の山。ナチス医師による生体実験。大量殺戮工場と化したガス室。人類史上の信じ難い悪行の記録フィルムです。

・1955年/フランス映画
・上映時間:32min
・監督:アラン・レネ

オリンピア第一部『民族の祭典』

『民族の祭典』
1936年に開催された第11回五輪、ベルリン大会の記録『民族の祭典』
「戦争」の傷をえぐる3作品の次に紹介するのは、平和の祭典オリンピック映画の2本です。共に敗戦国の作品となったのは何かの因果か? 1本目はドイツ、ベルリン五輪からです。

古代ギリシャの彫像が人間に変わり動きだすプロローグ。この大会が初の試みだった聖火リレー。そして当時は日本陸上は最強の時代であり、マラソン、三段跳び、棒高飛び、走り幅跳び、円盤投げなどの日本選手の活躍がみられます。陸上の表彰式でメインポールに日の丸がひるがえり、日章旗と共に聞こえる「君が代」に、胸が熱くなることでしょう。

本作は“オリンピア二部作”の第一部です。第二部『美の祭典』は水泳など、勝敗より華麗なカメラワークにより美しさを表現した作品です。

・1938年/ドイツ映画
・上映時間:138min
・監督:レニ・リーフェンシュタール

1964年に日本で唯一開催された夏季五輪の記録『東京オリンピック』

『東京オリンピック』
カンヌ国際映画祭国際批評家賞受賞作『東京オリンピック』
『犬神家の一族』の二度目の演出で健在ぶりを示した市川崑監督が共同脚本も兼ねたオリンピック映画の最優秀作品です。

100メートル競走のヘイズの爆発的なスプリント、マラソンのアベベの二連勝。日本のお家芸、重量挙、レスリング、柔道、水球、そしてバレーボールでは、東洋の魔女が決勝でソ連を破り「君が代」を響かせました。

余談ですが、オリンピック開催に合わせて東京が大変貌しました。首都高速、モノレールの開通、ホテルニューオータニや東京プリンスホテル、銀座東急ホテル、パレスホテルなど豪華ホテルのオープンラッシュなど五輪開催は東京の経済発展の象徴的イベントでした。

・1965年/日本映画
・上映時間:170min
・監督:市川崑


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