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『ドッグヴィル』177分の大衝撃(3ページ目)

2月21日(土)~公開。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の監督が放つ衝撃。廃墟の工場の床に白線をひいただけの超斬新なセットで撮影。カンヌ映画祭を震撼させた無冠にして最大の話題作!(R-15)

執筆者:南 樹里

ラース・フォン・トリアー監督への批判に対する応え!?

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の撮影後に、「アメリカに行ったことのない人間がアメリカを描けるのか?」という批判が起こったこともある。それに対してのラース・フォン・トリアー監督の応えともいえるだろう。『ドッグヴィル』に始まる【アメリカ三部作】の構想を打ち立てたのだ。一流のアーティストたちが、時折そうしたことを行ってるように。ラース・フォン・トリアー監督によるアメリカのコラージュ。それは、カフカの「アメリカ」、ハードボイルド小説、トーマス・エディソン(主人公の名)、トム・ソーヤーの冒険、大統領、民主主義、ギャング、デヴィッド・ボウイの「ヤング・アメリカン」、ジョン・フォード『怒りの葡萄』、大恐慌時代、といった頭の中にちりばめられていた膨大な「アメリカの記号」というパズルを1ピースずつ、はめていくように。

ドッグヴィル

エンディングの献辞について

「カトリン・カートリッジの思い出に捧げる」は、当初、ヴェラ役で撮影に入ったカトリン・カートリッジ(『奇跡の海』『ノー・マンズ・ランド』)が、父の病気で帰国したため、出演シーンは全てパトリシア・クラークソンで撮り直された。その後の2002年9月、敗血症と肺炎でカトリン・カートリッジ自身が41歳の若さで急死するという不幸が起ったため捧げられているものだ。


ラース・フォン・トリアー監督&ニコール・キッドマン語る

Q:監督をどう思いますか?

ニコール・キッドマン:ラースはたくさんの人間にたくさんの解釈を与えることが出来る数少ない監督だと思うわ。彼は本当に普通の監督と違うスペシャルなやり方を持っているの。そこが大好き!ピカソの絵を見るとき「これは何々について描いている」と決まった答えがあるわけじゃないでしょ。彼の映画はそんな感覚と似てるわ。人々はこの映画を本当にそれぞれの考え方で解釈すると思う。ある人は怒るかもしれないしある人はひどく動揺するかもしれない。だけどラースのフィルムはそれでいいわけだし、そういった「解釈の違い」こそが重要なのよ。だから、この映画を厳格に定義付けすることは、ある意味価値を下げることになりかねないわね。私が仕事をした監督の中ではキューブリックも同じようなタイプね。

Q:この映画のインスピレーションの源を教えてください。

ラース・フォン・トリアー監督:復讐の映画というアイデアはイェンス・アルビヌス(『イディオッツ』主演)と車中で「海賊ジェニー」を聞いていて浮んだ。ブレヒトとヴァイルの「三文オペラ」の歌だ。すごく力強いし復讐がテーマで前から好きだった。「海賊ジェニー」が孤立した町の話なので、ドッグヴィルもロッキー山脈のどこかそういう場所にした。ロッキー・マウンテンってまるでお伽話に出てきそうな響きだからね。大恐慌時代にしたのは雰囲気がぴったりと思ったから。

映画を作るとき、あることで“変な”方向をとったら、残りはすべて“普通”にしとく方がいい。いろんなことをやりすぎると観客はどんどんついてこれなくなる。一度に多くのことをしすぎないこと。実験で大事なのは一度に一つずつファクターを変えることだよ。ブレヒトと彼のシンプルでミニマルな演劇にはかなり影響されてる。観客は家も何もないことをすぐ忘れてしまう。自分で町を想像していくし、もっと大事なのは人物に注意が集中できる。家がなければないで慣れてしまうものさ。僕が好きなビデオゲームにも白線でマッピングしてあるのが多いし、楡通り(エルム街)は「サイレント・ヒル」というゲームからとった。実際はロッキー山脈に楡の木は無いけどね。

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