戦争で夫に先立たれた戦争未亡人を主人公にした作品

戦争未亡人を主人公とした映画は数多あるが、それだけ戦後の日本には一人残された妻というのが多かったということを証明するもので、そしてまた、映画が、どれだけ彼女らを励まし、明日へ踏み出す力になったか知れない。

「乱れる」は、結婚間もなく戦争により夫に先立たれた子のない戦争未亡人が、少しずつ年をとり平穏な日常を送る中で、やがて義理弟に慕われ、内に秘められていた女であることの情に気付き静かに心乱され葛藤する物語です。

戻ることのない夫の実家、「森田屋酒店」で肩身の狭い思いをしながら生活する主人公、森田礼子には高峰秀子。義理弟、森田幸司は加山雄三です。

物語は単純ですが、見どころは後半です。礼子は不貞にも自分も幸司に惹かれつつあることを知り、故郷に帰る決心をします。送っていくという幸司と共に列車に乗り、途中で降りることとなるのは大石田駅、銀山温泉の最寄り駅です。

映画の中の銀山温泉の町並みは今と変わらぬ面影を残し、そこにあります。一心不乱走り抜けるラストは、高峰秀子自身もお気に入りの場面としてあげるほどの美しい名シーンです。

■乱れる
監督:成瀬巳喜男
主演:高峰秀子
DVD発売元:東宝ビデオ




※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。