無冠にして最大の話題作、ついに登場!!
『奇跡の海』(96)で審査員グランプリ、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)でパルムドール(大賞)を受賞したラース・フォン・トリアー監督の最新作は今年のカンヌでも群を抜いて一番の注目作となった。話題性豊かで贅沢なキャスティング、アブストラクトなセットのみで撮影されているという奇妙で信じがたい噂。世界中のジャーナリストの期待は、最高潮に達していた。公式上映は超満員、異常な熱気のなか上映が始まると、これまで見たことのない映画に期待は驚愕へと変わる。黒い床に白線が描かれただけで壁も扉も屋根もない、あまりに刺激的でミニマルなセットで繰り広げられるのだから。既存の映画には、見られない、何もない空間ですべてが展開していく。それに各章ごとに字幕が入り、これから起きる出来事を示すのだから。ナレーター(ジョン・ハート)がたえず状況を語り続け、観客をアジテートする。この斬新すぎるスタイルに加えて衝撃的なストーリーライン、さらには皮肉たっぷりのアメリカ像に賛否が激突、批評家たちの論争はヒートアップしているとか。
そのストーリーラインはこうだ!
原題『DOGVILLE』 *(R-15)日本語版字幕翻訳:松浦美奈[2003年/デンマーク/177分/シネマスコープ/SRD]配給:ギャガコミュニケーションズ Gシネマグループラース・フォン・トリアー監督って? LARS VON TRIER1956年、デンマーク生まれ。、1983年にデンマーク映画学校を卒業。その翌年の1984年には【ヨーロッパ三部作】の第一作、『エレメント・オブ・クライム』をカンヌ国際映画祭で上映。この三部作は『エピデミック』(1987)、『ヨーロッパ』(1991)と続き、このヨーロッパの現代・未来に影を落とし続ける主題を冷徹に扱い国際的な脚光を浴びる。
また並行して1988年にはデンマークの巨匠カール・テオドア・ドライヤーの遺稿脚本に基づき『Medea』(『王女メディア』の脚色)をテレビ映画として監督している。1994年と1997年の二度に分けて製作したテレビ・ミニシリーズ『キングダム』はカルト的傑作として各国で劇場公開もされた。また本作は1995年にトリアーが中心になって始まった「ドグマ95」運動のコンセプトのベースともなった。
作風を一新した彼は全編手持ちカメラを多用した『奇跡の海』(1996)で絶賛を集め、カンヌ国際映画祭グランプリに輝く。これは【黄金の心三部作】の第一作という意味でも記念すべき作品となった。次作は「ドグマ95」の方法論を適用した『イディオッツ』(98)で知的障害者を装う集団を描き人間社会の善意と偽善の狭間をえぐり、賛否両論の大論争を巻き起こす。2000年には【黄金の心三部作】の最後を飾る『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を、歌手ビョークを起用しミュージカルとして演出、カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝き、その地位を不動のものとした。現在最も注目を集める映画作家の一人である。