テクノポップ/フューチャーポップ

近未来対談~大人のための相対性理論(5ページ目)

『ハイファイ新書』がオリコン7位を記録した、ポストYouTube時代のポップ・マエストロ・・・相対性理論について助手、研究生、小悪魔(新キャラ登場)と共に分析してみました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

作り手にとって勇気が持てる時代

助手:
Perfumeと相対性理論が構造的に似ているなんて話をすると、Perfumeが好きすぎて、何でも好意的なことは「Perfume」の一言で片付けてしまう人のように思われてしまうかもしれません。まぁ実際その指摘もあながち外れていないですが、でもこれには秘密があると思うんですね。

両者ともに大きなプロモーションもなくヒットしました。その背景にはYouTubeやニコニコ動画といった、ネットでの盛り上がりが大きく影響しているといわれています。今まではレコード会社がプロモーションを打つ→雑誌などのメディアが取り上げる→CDショップが動く→消費者が購入するという流れが主流でした。でも、いまはWEBの動画サイトなどで消費者が勝手に盛り上がる→CDショップが動く→雑誌などが取り上げる→レコード会社が動くという全く逆の流れが生まれています。Perfumeや相対性理論はこちらの流れですね。

となると、大きなプロモーションの後ろ盾がないアーティストが売れるためには、まずWEBの動画サイトで盛り上がってもらわないといけない。そこで欠かすことができないのが、しょっちゅう動画サイトを見ているようなタイプの人たちの嗜好性にマッチするある種のヲタ性、萌え性。

そういった要素に加えて、「おや?」と思わせるかっこいいクラブサウンドやロックサウンドを主軸におくことで、WEBの動画サイトで話題になったのではないでしょうか?

Perfumeは偶然にもその方程式にあてはまったのだと思いますが、おそらく相対性理論はそういった部分においても若干の確信を持っていたようにさえ思えてきます。だからこそ自分たちのことを「ポストYouTube時代のポップ・マエストロ」と名乗っているのでしょう。本当にクレバーなバンドだと思います。

先生:
改めて言いますが、相対性理論がちゃんと売れた事は喜ぶべき事態ですね。それは、相対性理論をどう評価するとか以上に、あんな覆面バンドが(たぶん)低予算のマーケティングで売れた事ですね。

メジャーなレコード会社の大々的なサポートがなくても、素晴らしいコンセプト(PVも含む)、素晴らしい楽曲があって、Amazon、タワレコ、HMV、iTunesだけにでもディストリビューションできれば、YouTube、ニコ動、MySpaceなどを使ってメジャーに負けないプロモーションが出来るわけですから。

この不況の時代、お金をかけて、露出をとにかく上げて売ってしまおうというのは、いただけませんね。いい意味で、“計算”してほしいですね。

助手:
まったくその通りです。よく「モノが売れない時代になった」というようなことが言われますが、もう少し細かく言うなら「今までのやり方では、モノが売れない時代になった」ということだと思います。

ちゃんとしたものは、ちゃんと売れる。そういう時代に突入しているんだと思います。売り手にとっては難しい時代なのかもしれませんが、逆に作り手にとっては勇気の持てる時代なのかもしれませんね。
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