相対性理論とPerfume
助手:と、ここまでくると何か似たような話を思い出しませんか?
そうです! これってPerfumeのクロスオーバー感と一緒なんですよ! (さっきの10倍くらい得意げに)
先生:
そこまで得意げに言われると、無性に否定したくなってきますが、残念ながら自分も助手と同じ方向にベクトルが向かっています。Perfumeと相対性理論というのは、クロスオーバー感、僕的には、ハイブリッド感というのが、同期する理由、すなわち売れた理由だと僕も思いますね。
助手:
おお、先生もですか!よかった。このあいだのAIRAとAIRが似てる話のように、場の空気がとまったらどうしようかと思ってました。
先生:
そのわりに、やたらと得意げに話してましたが・・・
助手:
(無視して)ザックリ言ってしまうと、Perfumeはクラブ系の人種とアイドルヲタ系の人種の両方から受け入れられてブレイクしました。相対性理論はポストロック系の人種とアイドルヲタ系の人種の両方から受け入れられたといっていいと思います。
小悪魔:
(悩んだ顔で発言)ポストロックだけではないと思います。だって、今ポストロックなんて全然流行ってないし。 これもクロスオーヴァー感と繋がるところなんですが、相対性理論はテクノ、ハウス、いわゆるダンスミュージックを愛するパーティーピープルの人にも非常に受け入れられています。何コレむちゃくちゃいい!って。無論わたしもパーティーピープルです。
助手:
ポストロックという言葉が誤解を呼ぶなら別の表現でも構いません。いわゆるポストロックと形容された音楽を指すのではなく、単純に実験的で進行形の音楽を好む人達という意味合いですね。
小悪魔:
相対性理論のmixiのコミュとか観てると、売れてから物凄い音楽の趣味悪いんですよ(独断と偏見ですみません)。「ほかに何を聴いている?」というトピでは、わたしが大嫌いなのもいっぱい出てきます。さっき助手さんが上げていた人達も・・・ 助手さんとわたしだけでもここまで音楽の趣味が全く違う、それなのに相対性理論はウケてる。Perfumeもですね。ここはクロスオーヴァー感の妙につきます。
先生:
Perfumeというのが、アイドルという世間で言うアキバ系的要素(助手の言う所の“萌え”ですね)と楽曲的には音楽通的な渋谷系的要素から、アキシブ系じゃないかという話と通じますね。
かっこいいものとかっこいいものを掛け合わせても、かっこよくならない、いや、かっこつけるなよーって言いたくなるし、お腹一杯で、かっこ悪かったりする。かっこ悪いものとかっこ悪いものを掛け合わせても、やっぱりかっこ悪い。ここでは、かっこ悪い(とされている)ものが、かっこいいものと混ぜ合わされた時に生まれる不思議なかっこよさというのが、ポイントでしょう。
助手:
おっしゃるとおり!それって実はまさに今の時代の重要な要素だと思うんです。あらゆるコミュニケーションが氾濫して、みんな「そのまんま」なものに反応しにくくなった。真面目に真面目な話をしたり、ふざけてふざけたことをすることに、どこかしら共感しにくくなったように思うんです。いや、正しくは、そういったコミュニケーションでは、ある一定以上はマスに広がらないことに気がつきだした。真面目に真面目な話をする場には、真面目な人しか集まらないですもんね。
先生:
まだまだかっこいいものが一元化する傾向のある日本国ですが、徐々に成熟している兆しと考えます。
助手:
こういった話に相対性理論がどこまで自覚的なのかは別として、もうひとつ、これはきっと自覚的にやっているだろうなと思う点。彼らはアングラ感とメジャー感のクロスオーバーも実現しているんですよね。
これ以上やるとアングラ過ぎるし、これ以上やっちゃうとメジャーすぎるしなあ、というギリギリの表現をしていますよね。相対性理論というバンド名にしたって、イベントで共演するほかのアーティストにしたって、ずいぶんとアンダーグラウンドなにおいがするのに、音はけっこうメジャー感があります。関西での初めてのライブを観たのですが、あぶらだこ大先生やマゾンナ先生と共演してましたからね。まぁ、この絶妙な立ち居地も、すごく確信を持って選んでいるように思えます。結果的にアングラ畑の人にも支持されながら、メジャーにもガンガン攻めていける。
先生:
でも、これって助手の言うようにギリギリの部分で上手くバランスを取らないといけないから、決して安直な掛け算の公式では出来上がらないのですね。
相対性理論のウィスパーヴォイスはまだ良しとして、あのやる気のない男子ヴォーカルはもう崖からもう少しで落ちる危ないギリギリ感。
助手:
ははは、あの声は崖から落ちる人の声でしたか。
先生:
意味が違うんですけど・・・
助手:
いや、でも確かにバランスを間違えると、逆にポストロック好きからも萌え好きからも非難されがちですもんね。研究生が最初に「ふざけんな!」と思った、というエピソードがなんとも象徴的です。