相対性理論が売れた理由
先生:じゃ、歌詞については後ほど・・・ なんかこれ売れそうと思ったら、『ハイファイ新書』はオリコンウィークリーチャートで7位まで行っちゃうし。こんなバンドが売れちゃう日本は、意外と捨てたもんじゃない。なんか、よく似た事を、Perfumeが売れ始めた時に、助手が言っていましたね。
助手:
言ってました言ってました。で、今回も思いましたもんね、捨てたもんじゃないって。例えば、僕はチャットモンチーが好きなんですけど、それはしっかりしたバンドサウンドの上に、アイドルポップス以上にアイドルポップス的なヴォーカルが乗っかるところのバランス感覚なんです。たとえば、高音を出すときに音程が不安定になったり、歌ってる途中で息切れしそうになったり。そういうロウファイ感というか、決してディーバ系には出せない魅力とでも言うか。それって僕がアイドルポップスに求めてるものなんですけど、そういう魅力をチャットモンチーは無自覚に持っていると思うんです。他にもYUIなんかもそういう魅力がありますよね。
で、この相対性理論はそれに近い魅力を持っているんですが、チャットモンチーやYUIがその魅力に対して無自覚なのに対して、彼らは明らかに意図的に作り出しているように思うんです。わざと頼りなさげなウィスパーヴォイスで歌ったり、歌ってる途中にブレスをたくさん入れて脆弱さを強調したり。この言葉はあまり好きではないですが、しっかり狙って”萌え要素”を盛り込んでいるんじゃないかな、と。 作り方としては”よくわかってるアイドルポップの手法”に近い感覚です。
先生:
『ハイファイ新書』のジャケは、確かに“やる気のない萌え”みたいな(笑)。
助手:
もちろん萌え要素を意図的に入れている音楽はたくさんあります。が、それらの多くは”はじめに萌えありき”になっているんです。萌えをどう音楽で料理するか?というベクトルとでもいいますか。その結果、萌え系の人には受け入れられるけど、そうじゃない人は敬遠しちゃうような音楽ができやすい。あらかじめターゲットを特定してしまうような作り方ですよね。
先生:
僕が初音ミクに対してイマイチ乗り切れないのは、実はあの過剰な萌えキャラなんですよね。初音ミクというソフトは評価するんですが、前面に出すぎーみたいな。
助手:
でも、相対性理論は逆なんですよ。nhhmbase(ネハンベース)あたりにも通じるポストロックなバンドサウンドに、あくまでアクセントとして「萌え」を加えている。だからこういう実験的なバンドサウンドが好きな人たちからも、萌え的なものを好む人たちからも受け入れられた。チャットモンチーよりもわかりやすく萌え要素が加えられているから、萌え側の人種にもとっつきやすかったんだと思います。これはもう確信犯としか言いようがないですよ。アイドルポップス的手法をロックバンドが取り入れたケースはしばしばありますが、これは最新型にして最高水準!だいたい「LOVEずっきゅん」って、どっかで聞いたことがあるなあと思ったら、ミニモニ。の曲に「ズッキュンLOVE」ってのがあるし、もう間違いなく確信犯! (なぜか得意げに)
先生:
そんなに得意げに言われても困りますが、相対性理論とミニモニ。が繋がるとは確かに意外ですね。でも、確かに元ネタとして持ってきてる可能性は捨てきれないです