抒情の奇妙な冒険
ガイド:抒情の奇妙な冒険 |
笹公人:
「念力三部作」と銘打っちゃったので、次は変えようという単純な理由です。
作風は基本的に変わっていないような気がします。
ガイド:
短歌の時代的背景はかなり昔までさかのぼりますね。
三億円の話をすると目をそらす国分寺「喫茶BON」のマスター
三億円事件は1968年ですから、笹さんの生まれる前。僕は小学生でした。妙にリアリティのある妄想を感じます。読んでいて“妄想”という言葉が浮かんだのですが、あとがきで笹さん自身も“妄想”という言葉を使っていて、なるほどって感じました。短歌って、実体験やリアルタイムでなくても、成り立つんだ!と・・・新しい世界が開けました。
笹公人:
ありがとうございます。
自分の生まれていない時代をなるべくリアルに詠むために、今回の歌集では主人公(私)を現在40代中盤の世代の人に設定しました。自分がもしもあの時代に生きていたら、何を考えどう行動していただろう?というのがひとつテーマになっています。
山田太一先生が「寺山修司は「架空の私」を、笹公人は「他人のノスタルジイ」を手に入れた。」という帯文をくださいましたけど、この言葉がすべてを言い当てていると思います。流石です。
なりきりYMO!
ガイド:「一九八〇年の教室」というお題では、やはりYMOが出てきました!
持ち出した箪笥を黒に塗りたくりYMOを演(や)る文化祭
ヘッドホンのコードを学生服に挿し無表情で弾くコズミック・サーフィン
なりきりYMO! この場合、ヘッドホンはあくまでもコスチュームなんですよね。
笹さん自身も宇宙ヤングとして「コズミック番長」というカヴァーをしていますが、やはり思い入れのある曲なんでしょうか?
笹公人:
そうですね。YMOで一番好きな曲は?と聞かれたら「コズミック・サーフィン」と答える時が多いです。その「コズミック・サーフィン」に勝手に詞をつけて十年以上歌っている「コズミック番長」ですが、実は、畏れ多くて細野さんにはまだCDを渡していません。ちなみにYMOのインスト曲すべてに日本語の歌詞をつけて誰かに歌わせてアルバムを出すのが僕の夢です。
とりさんのイラスト |