ムーンライダーズのレゲエ仕事
【山本】プロデューサーとしてのレゲエ歌謡仕事はどうでしょう? 作編曲者として、幾多のテクノ歌謡名曲を残したムーンライダーズですから、きっと…。【先生】ムーンライダーズは、YMOと同じく多くの優秀作品をプロデュースしています。その中でも鈴木慶一がプロデュースした(最近ではリー・リトナー夫人としても知られる)杏里の『哀しみの孔雀』(1981年)は、多分、杏里が認めないであろう杏里の最高傑作です。「エスプレッソで眠れない」というアンニュイなレゲエ風シティポップが収録されています。他にもシティポップ系の女性シンガーがニューウェイヴ化して、レゲエ歌謡に足を突っ込んでいるケースは結構ありますね。
【山本】鈴木慶一といえば、そもそも私が「レゲエ歌謡」というものを意識するようになった曲がありまして。ニューウェイヴに転身後の石川セリが、ムーンライダーズを従えたアルバム『BOY』(1983年)収録の「睫毛の先の21世紀」がそれです。ほんといい曲なんですよ。中後期マッドネスと同質の胸キュン感を求める向きには強くオススメです。
【先生】石川セリの『THE BEST』を聴きなおしてみたのですが(残念ながら、 「睫毛の先の21世紀」は収録されず)、いいですね石川セリ。ニューミュージックの系譜に居ながらも、矢野誠や大村憲司のニューウェイヴ的実験具合が。松任谷由実の「川景色」を矢野誠がテクノにしてしまっているのが、素晴らしい。「BOY」もレゲエ歌謡とまで言えませんが、スパイ歌謡的でアフタービートがあったりして面白い。うーん、今度は実験的ニューミュージック対談しましょう。
割と最近ですが、「きいてアロエリーナ♪」として記事にもしたんですが、シャーベット(=周防玲子+謎の人)の『きいてアロエリーナ きいてマルゲリータ』(2001年)には、おもちゃみたいなレゲエ・ヴァージョンもあります。
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