アンチテーゼ?
――変拍子へのこだわった理由は?アンチテーゼでしょうか?アンチテーゼ、でした。最初は「4つ打ち」ならぬ「3つ打ち」とかでちょっとフロア的な意識(得意な方ではないが)もあったんですが、そのうち普通に打ち込みできるようになってきたので、そこからは無理せず好きなように自然にやっていきました。でもそこまで行くのに大分時間がかかり、このアルバムを作るのに1年半近くかかっています。あとさっきも言いましたが変拍子にこだわりましたがそれがすぐわかるようにはしませんでした。「なんか変だけどまあ普通かな」みたいな感じだと思うんです。もっといえば気にしなければわからないくらい。そうじゃないと、先に聞くほうに構えられると楽しくないと考えていました。なので、まずは何も考えずに聴いてほしいと思っています。むずかしい顔して音楽聴いても楽しくないんです。作る時も聴く時も気軽な感じです。
作り終えてみて、逆に当たり前なんですが、4/4もあらためて4/4なんだと思いました。普通にシーケンサーの電源入れれば「Tempo=120,4/4」と出ますけど、これまでそんなこと意識してなかったですからね。でもなぜか5/4はできませんでした。次はやってみたい!
――「野村テーラー」や「千日前線」が出てくる不思議なタイトル・・・何か意味があるのでしょうか? 聞く事自体がナンセンスなんでしょうか?
「野村テーラー」は京都に実際にある生地屋さんの名前で、当時の彼女が服飾の勉強をしていたのでよく行ってたんです。女性っぽいイメージの曲で、最初は「NICE CLAUP」か「HYSTERIC GLAMOUR」にしようと思ってたんですが、「野村テーラー」と言うほうが思い入れがあったので変えました。
「千日前線」はあの大阪の地下鉄のことで、1996年当時、私が勤めていた職場が千日前線の終点の野田阪神にあり毎日その地下鉄に乗っていました。この曲のフレーズは映画「サブウェイパニック」という地下鉄のパニック映画からのサンプリングです。列車がハイジャック(劇中こう言います)され暴走する映画で、スピード感がありテンポのよい映画なのですが、どことなく千日前線のうす暗い感じがその映画に似ているのなと思って。ドラムンベースのちょっとダークめな感じの曲になりました。実際、野田阪神駅が終点なので電車は駅を越えません。映画好きなんでこの曲はできて嬉しかったです。
タイトルに関しては我ながら今回はよく出来たと思っています。
――この不思議なカオスなサウンドを作るJaemulkに影響を与えたものがあれば教えてください。
私はWAGON CHRISTの大ファンですごく影響を受けています 。彼の楽曲はどれも楽しんで作っている感じがして大好きです。音の表情がすごく豊かなんです。シンプルで好きな曲ももちろん沢山ありますが、どちらかというとごちゃごちゃしているものが好きなんだと思います。他にも言えばキリがないですが、YMO、P-MODEL、電気グルーヴ、エスキベル、コーネリアス、アート・オブ・ノイズ、デペッシュ・モード、ガーリックボーイズ、小津安二郎、ケンドー・カシンなど様々です。なので、ジャンルとかは関係なく自分が面白いと思ったものが全部影響受けています。
ちなみに最初にYMOを聴いたのは小学2年生のころ1982年で、当時VAPが出していた全日本プロレスの選手のテーマ曲集『ウエスタン・ラリアット』で、リッキー・スティム・ボートという選手の入場テーマが「ライディーン」でした。おそらくVAPの社員さんがつくったのではないかという、つたない打ち込みの「ライディーン」ですがずっとそればかりきいていたので妙に思い入れがでていまでもその「ライディーン」を聴いたりします。生まれて初めて買ってもらったカセットテープだったので、そのコンピにも結構影響をうけていると思います。全曲インストで、曲と曲の間に実況みたいな声も入っていてアルバムとして聴くと面白いですよ!
――日本盤用にボーナストラックが2曲ありますが・・・・
こういうの好きなんですけど、もちろん海外の人にも聴いてもらいたい。がんばって実際海外から出せたら本当にボーナス2曲は抜きます!