Controlled VoltageからTIME CONTROL
――稲見さんは伝説の関西ニューウェイヴ・バンド、Controlled Voltageがミュージシャンとしての活動の始まりなのでしょうか? オムニバス『トロイの木馬』(1993年)にも参加しており、同じくインタヴューさせてもらった福間創さんも在籍されたと思いますが。あのバンドは電子音楽だけどライヴ中心のバンドがやりたかったので、そういった編成(生ドラムがいるとかボーカリストがいるとか)を条件に結成しました。 録音は一人ででも出来るし、それまで録音ならではのテープ編集やコラージュ的な作品を作っていましたが、とにかくバンドという形態でのエレクトロニックなものをやりたかったので、それがControlled Voltageとなりました。また、そのバンド以前の眠っている音源とかも何らかの形で発表できればと思っています。15年くらいくらい前の音源ですが今聴くと結構おもしろいんですよね。
――C.U.E. recordsからもControlled Voltageの『Lost And Forgotten』という音源が出ていますね。活動は実際どのくらいされていたのでしょうか?
活動は91年~95年くらいだと思います。ちなみにあのアルバムは5枚のコンピレーションに収録された音源を集めてリマスターしたものです。
――その後はTIME CONTROLというバンドに活動の移していかれたのですね。 音楽性はかなり変わっていたのでしょうか? 海外レーベルとの契約をされた理由は?
TIME CONTROLは、当時、どうも機材やスタイルに頼り切ったテクノが氾濫してきたように感じていて、それには疑問があったんです。そもそもテクノとはいえ人力でやるのがカッコいいんじゃないかと思っていて、Kraftwerk、Ultravoxらもレコードとか聴くとクールで紳士的なんですけど、ライヴの写真とか見ると汗だくでやってるのがすごくカッコよく見えたんですよ、実際、演奏もレコードに比べダイナミックな部分が強調されていますし。まぁ、Controlled Voltageでやりたかったのもそういう部分ではあるんですけど。で、自分の中では即興のスリルとか、無責任さ(?)とかに傾倒というか、その意味合いが何となく解りつつあった時期だったので、信頼できる旧友でメンバーを集めて人力テクノというコンセプトでライヴバンドを作ったんです。ちなみに僕はベースを弾いています。
で、初ライヴを8chで録音したんです。で、ミックスして、なかなかおもしろく出来上がったんですね、それをSub Rosa(ベルギーのレーベル)に送ったんです。そしたらすぐFaxがきてリリースしようという話になりました。なんでSub Rosaだったかというと、レーベルの名前はビルラズウェルやScannerなど、アクの強いアーチストをリリースしていたので以前から知っていたのですが、たまたま行ったCD屋さんでSub Rosaのサンプラーがあって、買って聴いてみたら、僕らがやってる音と感触が似てるなぁ、と思ったんです。 で、音源を送ってみたらそのまま全世界リリースになりました。国内のレーベルには特に興味がありませんでした、僕らのやっていることって商業ベースにはのらないと思いますし、もっとたくさんの人に聴いてもらいたいという気持ちがありました。
当時、TIME CONTROLはエレクトロニックCANとプレスリリースで紹介されました。CANを聴いてたわけでは無いし、意識して作ったわけではなかったのですが、あとからCANを聴いてみると、なるほど、と思いました。表面的ではなく意味合い的ににているんだなと。余談ですが、リリース後、嬉しかったのは、ロンドンのノッティングヒルにあるラフトレードの本店に行ったときに、向こうが僕を知ってくれてたことです。ラフトレードはCabaret VoltaireやThrobbing Gristleをリリースしたところですし、感慨深かったです。
ところで、決めごと無しで、せーので演るのは楽しいですよ。あれこれ話をするより音出した方がやっぱ早いですよね。まぁでも暗黙の了解としてロック魂というのがあることが前提ですが。ただTIME CONTROLはメンバーが東京、京都、神戸などのため、なかなかライヴの日程を組むのが難しいため年に1~2度しかできないのが残念です。
『Live at Bayside』 |