テクノポップ/アーティストインタヴュー

いまさらイスラエル~第4版(11ページ目)

札幌で80年代から活動する伝説のポエトリー・テクノポップ・バンド、いまさらイスラエル。怒涛のリリース第3弾『Jose in Paris, Jose in the desert』では、摩訶不思議な世界がニッキ・ニャッキ・ニョッキ。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

〔吉野〕 後、三島さんが、音楽を志した頃、影響を受けたアーティスト(つまり三島さんのルーツ)についても教えてください。

〔三島〕 最初はビートルズですね。そして渋谷陽一のNHK FMでシド・バレットを聴いた瞬間にこれだと思いました。最初は当時の「ロック講座」でかかった「シー・エミリー・プレイ」です。それから「オクトパス」ですね。この曲は中学生のときコピーしました。コピーをやったのはそれくらいです。あとゲイリー・ニューマンの「カーズ」。出だしのシンセのグニュグニュグニュを聴いた時も、距離感ゼロでした。

それから話は変わりますが、上でも述べたように、当時作家の無名性みたいなものに興味がありました。特に周囲には自分の独自性、素晴らしさをアピールすることが目的となっているような表現が多く、不快でした。だから誰が作ったかが問題にはならないようなものを目指してましたね。すべての芸術家が屋根の上から自らの天才を叫ぶのは当然としても、それだけが内容なんて馬鹿馬鹿しいと思ってました。デュシャンですね。叙情的なものは色濃く残ってますけど。

〔吉野〕 ところで、匿名性と言うこともあってか、『タピエス』には作詞者・作曲者のクレジットがありませんが、 実質的に作詞・作曲は誰がどのようなプロセスで行っていたのでしょう?差し障りなければ、教えてください。

〔三島〕 詞・曲は私が作ってました。いまさらは殆どそうですね。あとはRX(ヤマハのリズムマシン)にリズムを組んできて、それにあわせてみんな好きなように演奏してるだけですね。アレンジをどうするとか話し合ったことは殆どないと思います。どうでもよかったんじゃないかな。何でもいいというか。

作詞・作曲のプロセスはなかなか説明しづらいですね。企業秘密でもあるので手の内を明かすわけにはいかない、というのは冗談としても、出来た品よりもそれを作る方法により意義があると思います。サイコロの一投げのような反世界感、超現実を作り上げるのような目的意識ですね。青っぽい文学青年然とした使命感を持っていました。それは先にも話してるかな。殆ど誰も気づかないと思いますけど。

〔吉野〕 ごくごく個人的な質問で申し訳ないのですが、『ミントチョコレート』『ふれきしペンシルバニア』の2曲が大好きなんですが、これらの曲を制作した時のエピソードなどあれば教えて頂きますか?

〔三島〕 『ミントチョコレート』の歌詞は自分ではやりすぎだと思ってましたね。なんとなく赤面したのを覚えています。いわゆるポップスというか当時の歌謡曲というか、ロックとかニューウェイブじゃないものをねらったんだと思います。『ふれきし』は萩原朔太郎かな。だいたい「ふれきし」というのが意味不明ですね。というかここが肝心なんですが、「ふれきし」という何かを実現しているつもりなんです。曲はどちらもニューウェイブが嫌うというか悪とするようなポップを目指しているんです。

あまのじゃくというかアンチというか。でも今でもそうですが、詞や曲を作った時のことは殆ど思い出せません。最初から覚えていないから忘れることも思い出すこともないと思います。なにせ媒介なのでそこにあるものを引っ張ってきたみたいな感じです! 天然!ともいえますね。ただ先にも言ったように引っ張り方は考えたいですよ。それで無理してあえてわかりにくく色々語っているわけです。このままで金にもならないとただの知恵遅れですから。なんてね。

思い出しました。『ミント』はダブルトラックだけどホントはいいとこ繋ぐはずでした。でもミックスの時忘れてしまった。もう一度唄いたいと言ってたのに。夏の日には日航機墜落事件の日、地下鉄菊水駅の連絡通路で録った唄とマンションの廊下にいた子供の声、パステルにはシャワールームの音とそこで録った唄が入ってます。あの日、米田さんに盆踊りに誘って貰ったのに断っちゃった。でも花火大会とお祭りに行きましたよ。米田さんが花火のようにパッと開いて散りたいと言うから、散る?と聞き返しましたね。八十五年、美しい夏の思い出です。
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