(12)『 クロッカーズ (CLOCKERS) 』
(1995年)
監督:スパイク・リー
主演:ハーヴィー・カイテル、ジョン・タトゥーロ、デロイ・リンド
音楽:テレンス・ブランチャード
ハンバーガー・ショップ店員の射殺事件を機軸に展開する真犯人究明ストーリー。
犯人だと疑われるハスラー(ドラッグの売人)をめぐり、黒人社会の決して払拭出来ない矛盾や社会病理を抉って行くシリアス・ドラマ。
『タクシー・ドライヴァー』『レイジングブル』等でNYのダークサイドに深く言及した社会派マーティン・スコセッシと、『ドゥー・ザ・ライト・シング』『マルコムX』等にてブラック・カルチャーの現実と矛盾を暴き出すスパイク・リーがガップリ四つに組みゲットーに根ざす救いようの無い社会問題をリアルに表現した作品。
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この映画に中では、この作品に描かれる問題提起をより明確化する為に幾つかのキー・アイコンが演出上使われている。
まずは、主人公が片時も手放さず呑んでいる飲み物(「チョコムー」という乳飲料)。乳飲料を好んで飲んでいる少年をスポークス・マンに使うことで、アメリカ国内で多発する少年犯罪の病理を露呈させる。
そして、主人公を慕う12歳の少年が欲するゲーム機もポイントに加えられている。それはSEGA製のコンピューター・ゲーム「ギャングスタ」(B-BOYが警察官を撃ち殺していくゲーム)であり、ゲットーの少年の正義の質を表現する。
また、冒頭で少年達がラップ・ミュージックに関してディスカッションするシーンも興味深い。
「チャックDは最高だ」
「バカ言えロクなモンじゃねえよ」
「アレステッド・ディヴェロップメントもな」
「最低だ」
「黒人の風上にも置けねえ」
「人も殺さずに何が?過激なラッパー?だ」
「やっぱ過激でなきゃ」
「奴らは女もなぐらねえレイプもしねえ腰抜けさ」
「クスリも殺しもやらないどこが過激だ。腰抜けの音楽だ。過激とは言わない。」
「人を撃たなくても…」
「俺が認めるのはトゥパック、Gラップ、ウータン」
「ドクター・ドレも」
「そうそう」
「夢や希望を歌って何になる。現実は甘くない。」
「世の中セックスと暴力だ」
「夢や希望も悪くないだろ」
そして彼らブラック・コミュニティーに生きる若者の価値観/道徳観に関してはこう表現する。
「現実がわかってね。金は薬で稼げ。何事にも金がかかる。だからクスリを売るんだ。」
「それを忘れるな。」
そしてそんな終わり亡き黒人間の争いに壁嬰するNYPD(ニューヨーク警察)はゲットーに住む黒人全てにこう語る。
「こんな地区つぶしちまえ」
「いずれ殺しあって全滅さ」
「全くだ」
「黒人どもは永遠にこの繰り返し」
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作品のエンディングでは、主人公がゲットーを脱出する事でしか更正出来る術は無い、といったメッセージを残す。
ブラック・コミュニティーが回復不可な病に呑込まれていることを示唆した、後味の悪い作品だ。
『 クロッカーズ(CLOCKERS) 』サントラ
1.People in Search of a Life 2.Love Me Still 3.Silent Hero 4.Bird of Freedom 5.Return of the Crooklyn Dodgers 6.Bad Boy No Go a Jail 7.Blast of the Iron 8.Reality Check 9.Illa Killa 10.Sex Soldier 11.Reality 12.Changes
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