（11）[ ROY AYERS ]
さて今回のアーティスト・コラムは、R&B/HIPHOPからは少し視点を外してアザー・サイドからリスペクト・アーティストの紹介を。
でもってその番外編第一弾は“ロイ・エアーズ”です。
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ロイ・エアーズといえば、50’s～60’sのいわゆる＜ストレート・ジャズ＞に属するでは無く、また 80'sブラコン・ムーブメントに乗じポップ・ミュージックとのクロス・オーヴァーを図った＜フュージョン＞に属するでも無く、70's～80'sのサイケデリック・ムーヴメントに乗ってソウル・ミュージックとの融合を試みた、いわゆる＜ソウル・ジャズ＞シーンに属する大御所中の大御所アーティスト。
で、このアーティストに大きなスポットが当たるきっかけとなったのが、80年代後半から90年代初めに起こったレア・グルーヴ・ムーヴメントとヒップホップ・アーティスト達の≪ジャズ・ネタ復興主義≫によるもの。
まさにその当時のヒップホップ作品においてはネタの宝庫として珍重され使いまくられたロイ・エアーズ先生の作品群。
その一部を挙げただけでも
| 〇ATCQ“Description Of A Fool”←“Running Away” 〇BRAND NUBIAN“Wake Up (SUNSHINE EXTEND MIX)”←“Everybody Loves The Sunshine” 〇PETE ROCK &CL SMOOTH“Searching”←“Searching” 〇COOLIO“Mama,I’m In Love Wit A gANGSTA”←“Mystic Voyage” 〇DJ JAZZY JEFF AND THE FRESH PRINCE“Just Kickn’ It”←“Mystic Voyage” |
とたんまりと出るわ出るわ。勿論ガイド本人もこのムーヴメントを受けて、御大に深く関わる事となったのですが...。
そうしたネタ的視点はともかく、このアーティスト本人に関わる魅力に言及するとなると何と言っても
「70'sという古き良き時代のフレイヴァーと、あの時代が醸していた胡散臭さもしくはダーティー・マインド、及び泥臭く粘りまとわりつくような重々しいグルーヴとブラック・ミュージックが根本として兼ね備えるファンキー・スピリッツがドス黒く渦巻くサウンド」
その一言に尽きるでしょう。
70年代という時代背景、建国史上最大の汚点を刻む事となったベトナム戦争という大混乱の後始末をアメリカが抱えた時代。
そうした軍事行動に反するポジティブな活動として平和主義や自由主義を唱えるフラワー・ムーヴメントの台頭。及びネガティブな側面では恐怖や無力を紛らわす手段としてのドラッグ・カルチャーの横行。
またブラック・コミュニティーでは自らのアイデンティティー獲得の為にアフロ・アメリカン達が一丸となり≪公民権運動≫という政治的社会運動が展開された時代を経過した後の混沌極まる社会情勢。
そしてそうした数々のポリティカル・メッセージは全世界を駆け巡り反戦運動やドラッグ・カルチャーが蔓延し、幾つものカウンター・カルチャーが未曾有に出現したまさに混乱と混沌が地球規模で交錯した時代。
そんな鬱屈したパワーに満ち溢れた時代を象徴するが如くダークでダーティーでクールでファンキーでドープな、まさにブラック・ミュージックが持ち得る全ての要素が入り混じった最強のグルーヴを提供してくれる、これがロイ・エアーズの凄さでしょうか。
そんなパワフルなグルーヴだからこそ、数多くのヒップホップ・アーティスト達からサンプリング・ソースとして珍重されたのでしょう。
ミドル～ニュースクール・ヒップホップ好きは勿論のこと、まだその時代のヒップホップ・グルーヴを体験していない方、その時代のヒップホップ作品を再評価するのももちろんの事ながら、彼のようなオリジネイターのサウンドも同時に体験してみるのはいかがでしょうか？
（次ページに続く）
