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80年代名盤レビュー『TOTO IV』 その2

グラミー賞6部門を獲得しTOTOを世界的なバンドに押し上げた『TOTO IV』だが、この後のTOTOは低迷してしまう。TOTOにとって『TOTO IV』とはいったいどんなアルバムだったのだろうか。

執筆者:田澤 仁

TOTOの歴史の中でも重要な意味を持っている『TOTO IV』。今回は、TOTOにとってこのアルバムがどんな意味を持っていたのかを探ってみる。

デビューまでのTOTO


TOTO
明るくポップで聴きやすいロックが詰まったTOTOのデビューアルバム『TOTO』
TOTOは、スタジオミュージシャンが集まって結成されたバンドであることは有名だろう。ドラマーの故ジェフ・ポーカロを筆頭に、ギターのスティーヴ・ルカサー、キーボードのデヴィッド・ペイチとスティーヴ・ポーカロ、ベースのデヴィッド・ハンゲイト、そしてヴォーカルのボビー・キンボールの6人は、70年代半ばには、ポップス、ロック、AOR、フュージョンなど幅広いジャンルで活躍していた。70年代から80年代のアメリカのヒットシングルや著名アルバムには必ずと言っていいほど、彼らのうちの何人かがクレジットされていた。それほど引っ張りダコだったのだ。

彼らの70年代のセッションの仕事でもっとも有名なのは、ボズ・スキャッグスの『シルク・ディグリーズ』だろう。そしてこのセッションをきっかけにバンドが結成されたという話もよく聞くが、彼らの交流はそれよりはるか以前からあった。

高校の同級生だったジェフとデヴィッド・ペイチが一緒にバンドをやっていて、そこに後輩のスティーヴ・ルカサーが参加した。これが、TOTOの始まりといっていいだろう。このバンドは世襲制のような形でその高校で歴代続いていたもののようで、後の世代には、やはり引っ張りダコのセッションギタリストになったマイケル・ランドウ(ルカサーの同級生だという)なども在籍していたというから、すごいバンドだったに違いない。

プロのセッションマンとなった彼らは、自分たちのバンドでデビューするための準備も進めていたらしい。前述の『シルク・ディグリーズ』のセッションのとき、デヴィッド・ペイチがピアノで弾いていた曲を気に入ったボズが、その曲をアルバムに入れさせてくれと頼んだところ、これは自分たちのバンドでやるための曲だから絶対にダメだ、とペイチが断ったという。この曲が、78年のデビューアルバム『TOTO』に収録され、その後多数のカヴァーも生んだ「Georgy Porgy」だ。

『TOTO IV』までのTOTO


その1stアルバム『TOTO』は、基本的には明るいアメリカンハードロックという印象が強い。ただ「Georgy Porgy」のようなR&Bテイストの曲もあり、全体としてはポップで聴きやすくまとめたという感じのアルバムだ。そして2ndアルバムの『Hydra』は、それより少し重く、暗い雰囲気も漂っていて、ロック色も濃くなり、さらにどことなくプログレっぽさも感じられる。ヨーロッパで人気が出たというのも納得できる作風だ。そして3枚目の『Turn Back』は、へヴィなアメリカンハードロックアルバムだ。強引にまとめれば、1枚目でポップやハードロック、ソウルなどTOTOの持つ様々な面を出し、2枚目ではプログレ、3枚目でアメリカンハードロック、ということになる。アルバムごとに少しずつ違った面を出してきているとはいえ、この頃のTOTOはやはりテクニカルでハードなアメリカンロックバンドだったといえるだろう。

そんな流れでリリースされた82年の『TOTO IV』は、強いて言うなら1stに近いアルバムと言えるだろう。ただR&B、AOR色はさらに強く前に出ていて、より「黒っぽい」仕上がりになっている。もちろん以前のようなハードロック的TOTOの部分も失っているわけではない。抑え気味だがハードさやロック色もあり、前に出ているのがR&B、AORといった色。だから、ハードロックバンドが作ったAORアルバムというのが適当だろう。
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