インプロビゼーション(improvisation)
[いんぷろう゛ぃぜーしょん] 即興演奏。楽譜に頼らず、即興で作曲または編曲しながら楽器演奏を行うこと。ジャズ=即興演奏といっていいほど、ジャズにおいてインプロヴィゼーションは重要な概念だが、インプロヴィゼーションそのものは、クラシックをはじめあらゆる音楽ジャンルに存在するものであり、ジャズの専売特許ではない。
モダンジャズにおけるインプロヴィゼーションの特徴は、バークリー・メソッドに象徴される、コードワークと旋律の理論体系の存在である。このルールは、ビバップで研究され、ほぼ完成を見た後、さまざまなモダンジャズの展開の中で応用、あるいは克服されていくようになる。
多くのハードバップ奏者は、ビバップの理論体系を簡略化し、より多くの聴衆が理解できる、聞きやすい音楽に昇華させたが、一方ではビバップの限界を超える即興演奏を目指したミュージシャンも少なくなかった。
マイルス・ディヴィスはモード奏法によって、コードプログレッションに依拠したビバップの語法を超えようとしたし、ジョン・コルトレーンは、シーツ・オブ・サウンズと呼ばれる、1つの和声に対して大量の音符を詰め込むスタイルによって、ジャイアントステップスなどの複雑なコード進行を持つ曲を自分のものにした。
中でも、オーネット・コールマンが提唱したフリー・ジャズ運動は、和声と律動という、ジャズがよって立つ地面を豪快に捨て去り、いわば旋律のみによるインプロヴィゼーションを志した運動だったといえる。
現在(2006年)のジャズシーンでは、ビバップやモードを吸収したバークリー・メソッド的な下地のもと、フリー・ジャズの要素や志向、あるいは「音色」「アーティキュレーション」など、理論化を拒むような方向性からインプロヴィゼーションの展開に挑むミュージシャンが一般的であるように思われる。
●類義語
アドリブ(adlib)
ウォーキングベース(walking bass)
[うぉーきんぐべーす] 4拍子の曲の場合、1拍に1音ずつコード構成音を中心とした旋律を演奏する、ジャズ独特のベース奏法。一定のリズムで歩いているような感覚から、ウォーキング(walking)、あるいはランニング(ranning)と呼ばれる。裏コード
[うらこーど] 代理和音の1種で、ルートが増4度(減5度)ずれたドミナントセブンスコード同士を代理するもの。両者は構成音内の3度と7度の音の間に、緊張感の強い増4度関係を持っており、3度と7度を入れ替え可能であることによって、代理が可能となると説明される。裏コードの活用はサブドミナント→ドミナントへの置き換えと併用することによって、ジャズらしい、流麗なコード進行を可能とする。例えば
、 C → Am7 → Dm7 → G7 (→C)
というコード進行は、まず、サブドミナントをドミナントコードに置き換えることによって以下のように置き換えられ、
C → A7 → D7 → G7 (→C)
さらに、置き換えた後のドミナントコードを裏コードに置き換えることによって、
C → Eb7 → D7 → Db7 (→C)
上記のような、ルートがクロマチックに進行するコードプログレッションを作り出すことができる。
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