モダンジャズが隆盛を誇った50~60年代に比べ、ジャズ喫茶の数は激減していますが、まだまだ都内を中心に、雰囲気のよいジャズ喫茶はたくさん残っています。
ジャズ喫茶というと敷居の高さを感じる人もいるでしょう。しかし、いくつかの約束事を覚えれば、音楽が好きな人なら誰でも楽しめるはず。もしあなただけの「行き着けのお店」が見つかれば、今よりも少しだけ豊かな「雨の土曜日」が過ごせますよ。
ジャズ喫茶の「常識のウソ」その1:喋っちゃいけない?
ジャズ喫茶の店内は静かな雰囲気。「私語厳禁」の張り紙がある場合も?? |
そんな「常識」を信じている人も多いはず。
けれど、これは「ウソ」とまでは言えないまでも、正確ではありません。もちろん、独りで来店する人は喋りませんが、2、3人で来ている人は談笑していますし、マスターと話しこんでいる人だっています。
ただ、一方でジャズ喫茶が「音楽(とコーヒー)を楽しむ場所」であるのも確か。音楽鑑賞を邪魔するほどの大声や大笑いは厳禁といってもよいでしょう。
店によっては、「●時~●時(喫茶タイム)のお話はご遠慮ください」などの張り紙がある店もあります。あるいは、あまりに音量が大きすぎて物理的に話せない(後述)店もあります。
いずれにしても、「私語厳禁」といった雰囲気を残しているジャズ喫茶というのは近年、ほとんど見られなくなっています。「ジャズ喫茶」と銘打っていても、入ってみると普通のカフェ、といったお店も少なくありません。イメージとしては、静かで落ち着いたバー、といったところが近いでしょうか。
声を出せない雰囲気の本格派ジャズ喫茶と、普通のカフェ風ジャズ喫茶。どちらがよい、といった問題ではありません。しかし、独りで楽しみたい、と思うなら、ここは思い切って、「本格派ジャズ喫茶」に挑戦するのも悪くないでしょう。音楽しか流れていない空間、というのは中々新鮮なものですから。
ジャズ喫茶の「常識のウソ」その2:耳をつんざく大音量
ジャズ喫茶の「売り」はいわずもがな、ハイエンドモデルのオーディオ機器から流れるジャズ。JBL、アルテックなどの高品位アンプ、スピーカーには、機器の性能を最大限に引き出せる音量というものが存在します。「どれくらいが良いのか」という見解はさまざまですが、結果として、「爆音」でジャズを流すお店もありました。今でも、一部のお店では、話し声が聞こえないくらいの音量でジャズを流しています。そういうお店では、音圧でコーヒーがこぼれそうになったりします。「普通」の人には耐えられない空間でしょう(笑)。
ただ、2006年現在、話し声がまったく聞こえないような爆音でジャズを流しているお店というのはなかなかお目にかかりません。むしろ、拍子抜けするくらいの小音量で、BGMのようにジャズを流している「ジャズ喫茶」も少なくありません。
個人的に「爆音」は好みではありませんが、ジャズ喫茶にはぜひ、「こだわりをもった音量」でジャズを流してほしい、と思っています。初めてジャズ喫茶を訪れる皆さんも、店に入ったとき、どれくらいの音量で音楽を流しているかということに注目してみてください。それは、どんなレコードをかけているかということ以上に、その店の「姿勢」がよく現れる部分だと思います。
ジャズ喫茶の「常識のウソ」その3:物識りじゃないと楽しめない?
かつてのジャズ喫茶は、ジャズ文化の拠点であり、ジャズ批評のサロンでもありました。マスターが現役の批評家だったり、そのマスターに噛み付くような知識豊富なアマチュアが集い、店に置かれたジャズ専門誌は擦り切れるほど読み込まれ……という光景が当たり前だった時期もあるようです。しかし、よくも悪くもそうした光景は過去のもの。今のジャズ喫茶には、ジャズ初心者を拒絶するような敷居の高さはありません。
「でも、知らない曲ばかりかけられても楽しくないんじゃないの?」という方もおられるでしょう。
そういう方も大丈夫。店によっては「リクエストノート」があり、好みのレコードをかけてくれるところもあります。また、演奏中のレコードジャケットは店内の決まった場所にたてかけられます。気になる音であれば、席を立ってジャケットを確認すれば、誰の、何というアルバムなのかがわかります。
実は、ジャズ喫茶の楽しみ方はここが「キモ」だと思います。マスターや、他のお客さんのセレクトで、今まで「聴こう」とも思わなかった新たな音と出会う。雨降りの土曜日に、そんな収穫がある人生って、ちょっといいですよね。
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