褒めたくないけど褒めざるを得ない、帝王による帝王のためのライブ
■第4位:ウィントン・マルサリス『スタンダード・ライヴ』ウィントン・マルサリス『スタンダード・ライヴ』 2005年8月発表。現役ジャズ界の帝王・ウイントン・マルサリスの最新ライブ盤。数十人と思われる観客を前に、これでもかというくらいストレート・ア・ヘッドな「ジャズ」を吹きまくる。基本はアルト・サックスのウェス・アンダーソンを加えたカルテットによるライブ。 |
(a)ジャズの創始者はルイ・アームストロングである--このことに異論を挟む人は少ない。
(b)現役最高のトランペッターはウイントン・マルサリスである--これについてもさほどの反論は見られないだろう。
しかし、(a)と(b)が単線的に結びついて、「これこそがジャズの歴史だ」と言い切ってしまった瞬間、エリントンやミンガス、モンク、そして何よりマイルスがほとんど重要な役割を果たさない、ウイントン・マルサリスを終着駅としたキッチュな「マルサリス的ジャズ史」が構築されることになる。
こういった「偽史編纂」に見られるような、彼の人間的な傲慢さは、しかしながら、そのプレイのすばらしさと表裏一体をなしていると私は思う。
おそらく彼のプレイがもっともすばらしい輝きを発するのは名シリーズ『スタンダード・タイム』のように(過去の)「歴史」を刻んでいる瞬間であり、新しい何かを創作しようとしている時ではない(『ザ・マジック・アワー』の失敗はそこにあったのではないか、と密かに私はにらんでいる)。
本作のマルサリスのプレイは、恍惚の域に達している。100年にわたるジャズの歴史の終着駅に自分がいる。自分こそはジャズの王である--その「勘違い」が、彼のプレイのモチベーションを支え、その演奏に類いまれな切れ味を与えている。私はそのように考えている。
●曲目リスト
1.グリーン・チムニーズ
2.ジャスト・フレンズ
3.恋の味をご存知ないのね
4.ドナ・リー
5.ホワット・イズ・ジス・シング・コールド・ラヴ
6.2ndライン
続いて第3位、いよいよ日本人グループが登場!