フュージョンとは「融合」するという意味。ドラゴンボールでこの言葉を耳にされた方も少なくはないでしょうが、そう、そのフュージョンです。音楽用語ではジャズとロックの融合。または、色々な音楽の融合といったところでしょう。そしてその中心にいたのが、ジャズミュージシャンでした。 ※ジャケット写真がAmazon.comにリンクしています。
『ビッチェズ・ブリュー』に参加したミュージシャンたちは、後にフュージョンの代表的グループを結成します。ウェイン・ショーター(サックス)とジョー・ザビヌル(キーボード)によるウェザー・リポート。チック・コリア(ピアノ)によるリターン・トゥ・フォーエバー、ジョン・マクラフリン(ギター)によるマハビシュヌ・オーケストラ。やはりマイルスバンド出身のハービー・ハンコックなんかもこの時代にフュージョン畑に身を投じます。これらのバンドがジャズ界にフュージョン旋風を巻き起こしたことは言うまでもありません。マイルスの進化によって、その遺伝子がジャズ界にばらまかれることになったのです。
そして天才ジャコ・パストリアスが登場します。天才というべきか奇才というべきか迷うところですが、ジャコの作った音楽、エレクトリックベースの演奏スタイルは、87年に35才でこの世を去ってからも、ジャズ界に多大な影響をあたえています。ステージを降りてからの奇行の数々も、ジャコを語る上では外しがたいのですが、今回は割愛…。
90年代に入り、フュージョンという言葉はあまり使われなくなります。理由は簡単。ジャズと呼ばれる音楽の多くに、なんらかの融合があり、それが当たり前になったからです。逆に純粋な4ビートのジャズが、アコースティックジャズだのトラディショナルジャズだの区別して呼ばれるようになりました。しかしフュージョンは消えてしまったわけではありません。FM放送などを聴いていると、そこかしこにフュージョンの「匂い」がただよっています。フュージョン特有のリズム、ハーモニー、メロディ、はたまた演奏技法や録音手法は、ちまたに溢れているようです。 |
文章: 佐久間 啓輔(All About「ジャズ」旧ガイド)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。